コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~
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発行者:風とケーナ
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ジャンル:ファンタジー

公開開始日:2010/06/20
最終更新日:2012/01/07 14:20

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コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~ 第15章 使者
ビルカパサの腕には、サンガララの戦いで砲弾を受けた際の傷を覆った包帯が、まだ痛々しく巻かれている。

負傷してまだ日も浅く、激痛も傷も癒えぬはずであったが、この男は、既に何事も無かったように振舞っていた。



トゥパク・アマルの天幕を抜けたビルカパサは、そのまま己の天幕近くに陣を張っている自分の姪、かのマルセラの所に向かった。

マルセラも、今では連隊長ビルカパサの正式なる隊長補佐の任にある。


深夜の蝋燭の灯りの下でクスコ近郊の地勢図を広げ、一人ブツブツと彼女なりに戦略をめぐらせていたらしきマルセラは、叔父ではあるものの、むしろトゥパク・アマルの重要な側近であり、さらに自軍の連隊長でもあるビルカパサの来訪に、しっかりと礼を払って応じた。


ビルカパサも、今や一人前の隊長補佐に成長しつつあるマルセラに、きちんと礼を払った。

そして、真っ直ぐマルセラの方に歩み来ると、「おまえに重要な任務を果たしてほしいのだ」と、じっと相手の目を見つめた。

その瞳の色には、ある種の決意が見て取れ、しかしそれと共に、感情の統制のいき届いたこの男には極めて稀なことではあったが、微かに揺れる何かを宿している。


叔父ビルカパサの、どこか通常とは異なる様子に、マルセラは何か、恐らく、ただならぬ任務を言い渡されるであろうことを悟った。



小さく固唾を呑み、それでも、真正面からビルカパサに向き直り、覚悟を決めた声で問う。

「叔父様、何なりと仰ってください。
この身が役立つのであれば、どんなことでもいたしますから!」
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