コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~
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発行者:風とケーナ
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ジャンル:ファンタジー

公開開始日:2010/06/20
最終更新日:2012/01/07 14:20

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コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~ 第15章 使者
モスコーソ司祭が睨みをきかすクスコの戦時委員会は、「この反乱の時にあたって、街を捨ててはならぬ。この命令に背くクスコ市民は死刑に処する!」とまでの布告を発した。

だが、リマからの援軍が到着せぬ状況下では、その死刑宣告まで謳った恐るべき布告の発令にもかかわらず、夜陰に乗じて逃げ出す白人たち、さらには、インカ軍に加わってしまうインカ族の者たちが後を絶たぬという有様であった。



しかし、トゥパク・アマルをはじめ、側近たちが頭を悩ませていたのは、クスコへの使者としていずれの者を立てるのか、という問題であった。

深夜のトゥパク・アマルの天幕の中で、男たちは蝋燭の火を受けながら、暫し言葉を持たず思案に暮れた。


アンドレスが身を乗り出すのを、ディエゴが鋭い目つきで、無言のまま強く制する。

よく考えよ、おまえが行けばその場で殺されるか捕虜にされるのは必定であろう、とその目は厳しく言っていた。


確かに、この場にいる側近たちのいかなる者が使者に立とうとも、モスコーソや戦時委員会の面々によって、その場で虐殺されるか、あるいは捕虜や人質とされて利用されるか――そのどちらかであろうことは、火を見るよりも明らかに思われた。


なお、既に、一応の回復をしたフランシスコも、この天幕の中に姿を見せていた。

とはいえ、その顔は以前にも増していっそう青白く、神経がピリピリと逆立っているさまが窺える。


いずれにしろ、使者として誰に白羽の矢を立てたものか、さすがのトゥパク・アマルも揺れる蝋燭の炎を見つめたまま、じっと考えに耽り、沈黙したままになっていた。


「暫し、失礼を」

そう言って、不意に立ち上がったのは、あのビルカパサだった。
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