コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~
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発行者:風とケーナ
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ジャンル:ファンタジー

公開開始日:2010/06/20
最終更新日:2012/01/07 14:20

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コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~ 第15章 使者
トゥパク・アマル率いるインカ軍本隊は、アレッチェ率いる討伐隊が到達するよりもはやく、12月28日、ついにクスコを睥睨するピチュ山を占拠するに至っていた。


その日、トゥパク・アマルは暮れなずむ夕陽を受けながら、クスコの前面に聳え立つピチュ山の高台に立っていた。

美しい切れ長の目元に情熱と憂いを帯びた光を宿し、静謐な横顔で、眼下に広がるクスコの街並みを見下ろしている。


既に、季節は初夏から盛夏へと移りつつある。

足元の草地からは、郷愁を誘う虫たちの声が響き始めている。

まるで彼の訪れを待ち侘びていたかのようなインカ時代と変わらぬ清冽な風が、絹のような髪をサラサラとなびかせ、静かに吹き抜けていった。


徐々に傾きを増す陽光が、トゥパク・アマルの漆黒の影を背後に長く引いていく。

彼の深い瞳の中で、クスコの街並みは、透明な西日を受けて鮮やかな朱色に染まりゆく。




確かに、侵略を受けてからの200年間に、このインカ帝国の旧都には、侵略者によって無数の手が加えられてきた。

かつて中心部に厳かに聳え立っていたインカの太陽神殿も、遥か昔に取り壊され、その堅固な石組みの上に、今はスペイン人の手による寺院が建っている。


しかし、それでも、街の随所に築かれた精緻な石組みの建造物たちは、全てが取り壊されたわけではなく、スペイン人の目を逃れるように、ひっそりと空気に溶け込み、まだ今もそこにしっかりとその姿を留めていた。
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