コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~
第14章 忍び寄る魔
だが、本国からこの最果ての地へ赴任して何年間にも渡り、この不穏な植民地で勃発してきた幾多の問題事を、その並外れた冷徹な頭脳と判断力によって解決してきたこの男は、この時も、その明晰さを完全には失うことはなかった。
アレッチェは、大いに動揺しながらも、一方で、状況を客観的に分析してもいた。
11月4日にトゥパク・アマルによる代官殺しによって火蓋を切られた反乱が、今、このリマに情報が伝わった11月24日までの、たかが三週間弱のうちに、これほどまでの大規模な反乱に発展しているというのは、果たしていかなることなのか?!
反乱勃発が、真に今月4日であったとするならば、そう、全ては、ほんの三週間のうちに展開したことになるのだ!
そうであるとすると、それはあまりにも、事態の動きが速過ぎるではないか――!!
どう考えても、アレッチェには、にわかに信じ難かった。
しかし、反乱は、紛れも無く実際に起こった事実であり、その上、現在進行形で展開し続けている事実なのだ。
反乱を押さえ込むためには、まずは、客観的な状況の把握とその背景にある要因を把握することが不可欠だ。
驚愕の余韻を引き摺りながらも、既に通常の機能を取り戻したアレッチェの頭脳が、さらにめまぐるしく働き始める。
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