コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~
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ジャンル:ファンタジー

公開開始日:2010/06/20
最終更新日:2012/01/07 14:20

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コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~ 第14章 忍び寄る魔
トゥパク・アマルの発した回状の内容は、概ね次のごとくであった。


『聖なる洗礼を受けたキリスト者として申し上げますならば、カトリックの深い信仰をもつ教会の子は、崇拝する神の殿堂を汚すことなど、決してできはいたしませぬ。

わたしの意図は、キリスト教への信仰、僧院の平和が、乱されることではございませぬ。

この後も、僧院の聖なる処女童貞の純潔は決して汚れることなく、神父様たちは、わたしの部下から少しも害を蒙ることはありませぬ。

わたしの意図は、単に強制配給(レパルト)、強制労働(ミタ)、その他すべての人民を脅かす悪税などの言語道断な習慣や悪政を破棄することにあることを保証いたします。

どうかわたしの行動を見て、これらの誓言が決して方便ではなきことをご判断願いたく、深く願い奉ります』




キリスト教の本質を深く理解する神父たちの中には、そして、多くの敬虔な信者たちの中には、トゥパク・アマルのこの誓言と、そして彼の実際の行動の中に、真のキリスト者としての姿を見て取った者が少なからずあったはずである。

しかしながら、トゥパク・アマルの誓言を打ち崩すがごとくに、この国最高の司祭モスコーソは、執拗に彼をキリスト教への反逆者として激しく非難し、「破門」を叫び続けた。


この頃、モスコーソ司祭がペルー副王領の副王ハウレギに書き送った書状の中でも、「トゥパク・アマルはカトリック王カルロス三世(註:本国スペインの国王)に盾突いているのでありますから、まさしくカトリック教に害を与える大いなる反逆者なのであります」と、力を込めて罵っている。


確かに、反乱行為なるものは、当時のスペインにおけるカトリックの頂点に立つカルロス王への反逆であり、それはイコール、神への反逆でもあるという、このモスコーソの理論もまた、皮肉なことではあるが、理屈上は一理あるものではあった。



かくして、トゥパク・アマルらインカ軍を覆う暗雲は、この後、まもなく首府リマに反乱の情報が伝わることにより、いっそう重く暗澹と垂れ込めていくことになるのである。
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