コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~
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発行者:風とケーナ
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ジャンル:ファンタジー

公開開始日:2010/06/20
最終更新日:2012/01/07 14:20

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コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~ 第14章 忍び寄る魔
実際、スペイン本国から渡ってきたスペイン人たちからどれほど虐げられていようとも、当地生まれのスペイン人たちは、「スペイン人」には変わりなく、その一方で、インカ族のためのみならず彼らをも解放しようと奮戦するトゥパク・アマルへの敬愛もあり、その両方の思いから深い葛藤状態に陥っていた。


そのような彼らの絶対的な精神的支柱であるキリスト教から、インカ側に加担することで己までもが破門されるという非常な恐れは、いかに心の内ではトゥパク・アマルの意向に賛同していようとも、表立った協力的な行動をとることを彼らに躊躇させるであろう。


彼らの置かれた複雑な立場と深い葛藤を理解しているトゥパク・アマルには、それもやむをえぬとの認識があった。


(だが――!)

彼は手の中にある、己の破門が書き記された書状を握り締めた。

(こうなることは、もともと予測の範囲。

しかし、人種を超え、一丸となって心を一つにし、強大な敵にも恐れず立ち向かうという、その形が崩れることは看過できぬことだ。

このまま、モスコーソ殿の思うがままにさせておくわけにはいかぬ…!!)



トゥパク・アマルは踵を返して足早に天幕へ戻ると、決然とした横顔でペンを走らせ始めた。

この時、トゥパク・アマルがしたためたのは、モスコーソ司祭の破門宣告の妥当性を暗に否定し、己の行動や政策の真意を改めて説明した各教区宛ての回状であった。


事実、歴史上の資料によれば、彼は、モスコーソ司祭の破門宣告を受けてまもなく、己の統治下に入った区域内の神父たちに堂々たる回状を送っている。

そして、己の行動や政策は、決して教会や僧職に逆らうものではない旨を厳かに誓言した。
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