コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~
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発行者:風とケーナ
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ジャンル:ファンタジー

公開開始日:2010/06/20
最終更新日:2012/01/07 14:20

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コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~ 第14章 忍び寄る魔
「アンドレス、聞いてくれ。

わたしは、キスピカンチ郡の代官を逃してしまった汚名を注ぎたくて、今回のサンガララでは力を奮いたかった。

だが、実際には、あの恐ろしい戦場で、わたしは身が竦んでしまったのだよ。
わたしは、あの戦場で逃げ続けた。

ふふ…そんなことは、トゥパク・アマル様には言えないが」

そう言って、フランシスコは皮相に鼻で自嘲する。


アンドレスは、額を押さえていた指の間から、驚愕の目でフランシスコを見据えた。

「え…?
な、何を…言い出すのです?!」


愕然としているアンドレスに視線を注ぎ続けたまま、まるで囁きかけるようにフランシスコが続ける。

「今日、あの戦場で、わたしは、自分が生き残るのに必死だった。
そなたが苦悩するようなことは…敵を斬るなど、そんな余裕はわたしには無かった。

…――わたしは、ただひたすら逃げ続けたのだよ。
あの酷い戦闘のどさくさに、味方の中に身を潜ませ、敵の刃を逃れて、必死に…。

そう…味方さえ、盾にしたさ。
そうでもしなければ、わたしは今頃、死んでいた。

そして、やっとのことで生き延びた。
…本当に怖かったのだ。
怖くて、怖くて…その挙句が、このざまだ」


天幕の中に点る蝋燭の灯りに浮き上がるフランシスコの横顔は、今や不気味に歪み、苦悶そのものだった。

滲んだ額の無数の油汗が、その粒の一つ一つにまで青白い蝋燭の炎を映し出す。




そして、再び苦々しく自嘲した後、アンドレスを見つめ、フッと微笑んだ。

「アンドレス、そなたは勇敢で、心根も、姿も、美しい。
トゥパク・アマル様の覚えもめでたい。
実に、羨ましいよ」


「……!!」

瞬間、アンドレスは反射的に身を固めた。


他方、フランシスコは、完全に表情を失っているアンドレスを斜めに見上げ、また声をたてずに笑う。
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