コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~
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発行者:風とケーナ
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ジャンル:ファンタジー

公開開始日:2010/06/20
最終更新日:2012/01/07 14:20

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コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~ 第14章 忍び寄る魔
他の側近の者とて、あなたを責めるような気持ちなど決して持ってはおりません、と言いたかった。

しかし、フランシスコのひどく思いつめた、そして、既に厚い壁で隔てられたような目の色に、今、安易な言葉がけは、かえってこの心に傷を負った人物の内面を閉ざさせてしまうように思われた。


暫し重苦しい沈黙が流れた後、地を這うような低い声でフランシスコが言う。

「アンドレス、そなたは、インカ族ばかりの側近の中では、唯一、わたしと同じ混血児…。

わたしと同様に、半分は、あの憎きスペイン人の血が混ざっている…そなたなら、わたしの気持ちも少しは分かるであろう。

我々は、所詮、半端者なのだ。
最終的には、インカの民にも、スペイン人にも、なりきれぬ。

どっちに転ぼうとも、周囲の者たちとて、結局は、我々を本当には受け入れまいよ」


そう言って、フランシスコは、じっとアンドレスを見つめて、また続ける。

「一体何のために、戦うのか…このような思いをしてまで……」


「そんな…フランシスコ殿…。
待ってください。
何を仰っているのか…」

己は完全にインカの人間だと信じてきたアンドレスにとって、フランシスコの言葉は、ひどい混乱を抱かせた。


しかも、フランシスコの、そのあまりに苦しげな目には、何かに憑かれたような、危うげな色が揺れている。

アンドレスはやや身を硬めながら、その目の色に圧(お)されるように微かに後退った。




一方、ひるみはじめたアンドレスの様子を見抜くように、フランシスコは僅かに笑う。

「アンドレス、聞いてくれるか」

「いえ…ちょっと待ってください」


混乱し始めたアンドレスが、己の指で額を押さえているのを認めると、フランシスコは、さらに意味ありげに声をたてずに笑う。

そして、アンドレスの制するのも構わず、むしろ、その混乱を煽るように、低い声で諭すように話しだした。
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