コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~
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発行者:風とケーナ
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ジャンル:ファンタジー

公開開始日:2010/06/20
最終更新日:2012/01/07 14:20

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コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~ 第14章 忍び寄る魔
サーベルを握って素振りをする気などには到底なれず、彼は皮相な気分で足元の地面に目を落とした。


本当に、これで正しい方向に進んでいるのだろうか?

己の為していることは、これで正しいのだろうか?


思わず両手で頭を押さえ込む。

熱くなった頭の中で、戦場の血みどろの情景が渦巻くように甦る。


己の刃にかかって死んでいく人々の悲痛なあの表情、あの絶叫、命あるものが息絶えていく瞬間、血の生臭いにおい…己の手で残虐な苦痛を与え、絶命させた無数の命――アンドレスもまた、突き上げる嘔気に苛(さいな)まれて、口元を押さえた。


背筋に、ひどい悪寒が走る。

急速に体温が下がるのを感じ、彼は両肩を腕で押さえた。


「コイユール…」

朦朧とした意識の中で、擦れた声でその名を呼ぶ。


俺のやっていることは、正しいか?

コイユール…俺のやっていることは正しいか?

教えてほしい、コイユール、君に…――。

「会いたい……」

殆ど声にならぬ声で小さく呟き、アンドレスもまた、身を震わせるようにして草の上にうずくまった。




それからどれくらい時間が経っただろうか。

彼はゆっくり身を起こし、先ほど放り出したサーベルを苦々しい気分で拾い上げた。


そして、心の中で己に毒づいた。

自分の為した所業をサーベルのせいにするなどと、何と愚かなこと。

すべては己の意志で行ったことだというのに。

そう、すべての責任は、自分自身にあるのだ。


アンドレスは引きつった表情のまま、天幕の方へと踵を返した。
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