二人は白い息を吐きながら、トゥパク・アマルの側近たちの天幕が張られている界隈に近づいていく。
周辺では、多数の衛兵たちが、どこにも増して厳しい警護の目を光らせている。
従軍医が「治療に来たのですが」と進み出ると、兵たちは待ち侘びたとばかりに、「こちらに!」と早足で案内してくれた。
まもなく通されたのは、ビルカパサの天幕だった。
天幕が近づくにつれ、あまりの心配と不安のあまり、コイユールの心臓は張り裂けんばかりに激しく脈打った。
そして、心の中で、祈り続けていた。
(どうか、どうか、アンドレスでは、ありませんように!!)
もちろん、トゥパク・アマルの側近の誰一人として負傷などしてほしくはないのだが、今の彼女にとっては、誰よりもアンドレスを案ずることを止めることは不可能だった。
天幕の入り口に従軍医が近づくと、「さあ、はやく、中へ!!」と、入り口の垂れ布が勢い良く内側から開かれた。
そう言いながら天幕の内部から姿を見せたのは――アンドレス本人だった。
「!!」
アンドレスとコイユールの目が完全に合う。
突然、本人を目の前にして、コイユールは足から力が抜けていくのを感じた。
今は、偶然の再会への歓喜や驚きよりも、何よりも彼の無事な姿への深い安堵から、その場にへたりこみそうなほどだった。
他方、アンドレスもまた、入り口の垂れ布を持ち上げたまま、完全に固まっていた。
コイユールの姿に釘付けられた目が離せない。
「…――コイユール、なぜ……?!」
聞き取れぬほどの擦れ声で、アンドレスが呟く。