コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~
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発行者:風とケーナ
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ジャンル:ファンタジー

公開開始日:2010/06/20
最終更新日:2012/01/07 14:20

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コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~ 第14章 忍び寄る魔
二人は白い息を吐きながら、トゥパク・アマルの側近たちの天幕が張られている界隈に近づいていく。

周辺では、多数の衛兵たちが、どこにも増して厳しい警護の目を光らせている。


従軍医が「治療に来たのですが」と進み出ると、兵たちは待ち侘びたとばかりに、「こちらに!」と早足で案内してくれた。

まもなく通されたのは、ビルカパサの天幕だった。


天幕が近づくにつれ、あまりの心配と不安のあまり、コイユールの心臓は張り裂けんばかりに激しく脈打った。

そして、心の中で、祈り続けていた。

(どうか、どうか、アンドレスでは、ありませんように!!)

もちろん、トゥパク・アマルの側近の誰一人として負傷などしてほしくはないのだが、今の彼女にとっては、誰よりもアンドレスを案ずることを止めることは不可能だった。



天幕の入り口に従軍医が近づくと、「さあ、はやく、中へ!!」と、入り口の垂れ布が勢い良く内側から開かれた。

そう言いながら天幕の内部から姿を見せたのは――アンドレス本人だった。

「!!」

アンドレスとコイユールの目が完全に合う。




突然、本人を目の前にして、コイユールは足から力が抜けていくのを感じた。

今は、偶然の再会への歓喜や驚きよりも、何よりも彼の無事な姿への深い安堵から、その場にへたりこみそうなほどだった。


他方、アンドレスもまた、入り口の垂れ布を持ち上げたまま、完全に固まっていた。

コイユールの姿に釘付けられた目が離せない。


「…――コイユール、なぜ……?!」

聞き取れぬほどの擦れ声で、アンドレスが呟く。
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