コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~
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発行者:風とケーナ
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ジャンル:ファンタジー

公開開始日:2010/06/20
最終更新日:2012/01/07 14:20

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コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~ 第14章 忍び寄る魔
せめて命が無事であることだけでもマルセラに確かめたかったが、今は正式な隊長補佐でもある彼女は任務で忙しく、コイユールのところに顔を見せにくる暇などなかった。

コイユールの口元から、思わず深い溜め息が零れる。



その時、高貴な身なりをした一人のインカ族の初老の男が、従軍医の方に急ぎ足で近づいた。

コイユールには知る由もなかったが、その人物は、あのトゥパク・アマルの老練の重臣、ベルムデスであった。

ベルムデスはやや緊迫した面持ちで従軍医に何かを伝えると、「かたじけないが、至急、頼む」と言い残し、また早足で引き返していった。


従軍医は診ていた兵士の治療を手早く終えると、自分の治療道具を急いで荷にまとめる。

それから、周囲を素早く見回し、コイユールの方に声をかけてきた。

「コイユール、私と一緒に来てくれないか」

不意のことにコイユールは驚いて、目を見開いたまま、ちょうど兵の包帯を巻き終わったその手を止める。


平素の彼女の働きぶりを知っている従軍医は、真面目な顔で言う。

「トゥパク・アマル様の側近のお方が、お二人も緊急に治療が必要らしい。
すぐに連隊長の天幕まで行かねばならぬ。
手伝っておくれ」


トゥパク・アマルの側近と聞いて、コイユールの心臓は止まりそうになった。

「誰ですか?!
誰が、怪我をされたのですか?!
どんな怪我なのです?!」

「怪我とも誰とも、そこまではまだ聞いていないが、行けば分かるだろう。
とにかく緊急を要するようだ」


コイユールは、ただもう心配で、それこそ従軍医を追い立てんばかりの勢いで歩みだした。

従軍医は、半ば急き立てられるようにして、小走りに進んでいく。


そんな二人を包み込むように、日の暮れた夜空からは、白い精霊のような粉雪が舞い降り始めた。

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