コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~
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ジャンル:ファンタジー

公開開始日:2010/06/20
最終更新日:2012/01/07 14:20

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コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~ 第14章 忍び寄る魔
インカ軍本営の一隅では、此度の戦闘で負傷した兵たちが、懸命な手当てを受けていた。

手当てを担当している者の殆どは女性たちで、戦場には出ずとも、彼女たちもまた、インカ軍を背後で強力に支えていたのである。


そして、その中にはコイユールの姿もあった。




敵の火器や剣によって負傷した兵たちの怪我の状態は様々で、中には瀕死の重態の者もいる。

彼女は、他の者たちが目をそむけたくなるような酷い傷でも避けることなく、丁寧に拭いて清め、薬草を配合して塗布し、優しく布で巻いて仕上げた。

必然的に、負傷の状態の重い兵士たちを中心に診る結果になっていた。



とはいえ、代替医療としての自然療法は行えても、所詮は一介の農民にすぎぬコイユールには医療行為などできようはずがなく、治療はしかるべき従軍医が行った。

インカ軍では複数の従軍医が働いていたが、ビルカパサの連隊に所属する従軍医は特にその腕が冴えており、トゥパク・アマルの側近たちからの信頼も厚かった。


この従軍医は、義勇兵として志願して参戦した者で、もともと村の小さな診療所を開業していた村医者であったが、実際、その腕はなかなか優れていた。

年齢的にはそろそろ初老にさしかかり、落ち着いた温厚な雰囲気の持ち主である。



それにしても、このサンガララの戦いでの負傷者の状態は、いつにも増して、ひどく酷いものだった。

手当てをしながら、コイユールの中に不安が募ってくる。

合戦がインカ軍の勝利に終わったということは聞いていたが、負傷兵の状態を見るにつれ、その戦闘がいかに激しいものであったかは容易に想像できた。


コイユールは、義勇兵たちの噂で、常にアンドレスが戦線の最前線で戦っていることを知っていた。

それがどれほど危険なことなのか、実際の戦場を知らぬ彼女には推測するしかなかったが、それでも、その危険の過大さは手に取るように想像できる。


負傷兵が運び込まれる度に、彼女は心臓が止まる思いで、そちらを振り向いた。

まさかアンドレスが――?!と、運び込まれる兵たちの治療をしながらも、気が気ではない。
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