コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~
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ジャンル:ファンタジー

公開開始日:2010/06/20
最終更新日:2012/01/07 14:20

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コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~ 第1章 プロローグ
それは、4年前、トゥパク・アマルという一人のカシーケ(領主)が、自らをインカ皇帝の子孫であることをスペイン側に承認させるため、この首府リマのアウディエンシア(最高司法院)まで訴えにきた際の資料だった。

資料の中にはトゥパク・アマルの経歴などを調べた書類の他に、トゥパク・アマル自身が自らしたためた直訴状も混ざっている。


アレッチェは、もう何度も読み返してきたその訴状を、再び広げた。

トゥパク・アマル直筆のその書類には、インディオとは思えぬような整った文字と澱みないスペイン語の文体によって、自らがインカ皇帝の直系の子孫であることが系譜図を添えて理路整然と記されていた。
スペイン人でも、ここまで流麗な文体を書ける者は、そうはいないだろう。



アレッチェは苦々しい表情で、グラスに真赤なワインを注いだ。

4年前のあの日、アウディエンシアに訴状を持って訪れたトゥパク・アマルと対面した時のことが、グラスの中の澱のように甦る。
アレッチェは、血の色をした液体で満たされたグラスを傾けた。
グラスの端が鋭い光を放つ。




あの時、一介のインディオのカシーケなどに、なぜ会う気になったのか分からない。

自らがインカ皇帝の子孫であると名乗り出てくる自称「インカ(皇帝)」は、トゥパク・アマルが訪れてくる前にも何人もいた。
いずれも取るに足らぬ名誉欲ほしさの、下賤なインディオ連中ばかりだった。


そのため、アレッチェは、当初、トゥパク・アマルの件もまともに取り合うに値しないものと考え、その件は部下に任せて適当にあしらうように指示をした。
そして、自分は別のもっと重要な案件に取りかかりかけていた。

そこへ部下が戻ってきて、トゥパク・アマルが直々にアレッチェとの面会を強く求めていると、やや気圧されたような青ざめた顔で言う。



ほんの気まぐれだったが、あるいは、何かの直観が動いたのか、アレッチェはトゥパク・アマルに会うことにして、アウディエンシアの面会室に向かった。

アレッチェのような高官中の高官に直接の面会を求めてくるインディオなど、実際、初めてであった。
そのため、多少、好奇心を刺激されたというのもあったのだった。
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