コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~
コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~
アフィリエイトOK
発行者:風とケーナ
価格:章別決済
章別決済は特定の章でのみ課金が発生いたします。
無料の章は自由にお読みいただけます。

ジャンル:ファンタジー

公開開始日:2010/06/20
最終更新日:2012/01/07 14:20

アフィリエイトする
マイライブラリ
マイライブラリに追加すると更新情報の通知など細かな設定ができ、読みやすくなります。
章一覧へ(章別決済)
コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~ 第12章 進軍
同じ頃、トゥパク・アマルもまた、一人、天幕を抜けて深夜の白い月を見ていた。

滑らかな月の光は流れるように地に注ぎ、彼の漆黒の影を静かに後方に引いていく。


真夜中の木立を吹きぬける冷風に揺られながら、サヤサヤと繊細な音を奏でる木の葉にも、月明かりが濡れたように反射している。

彼の長い黒髪が、風の中に溶け込み、音も無く舞っている。


辺りは、実に幻想的な眺めだった。

戦乱の足音が着実に近づいているというのに、この静けさは何だろう。

いずれが夢か現(うつつ)か分からなくなりそうだ。

嵐の前の静けさ、さしずめ、そのようなところであろう。



トゥパク・アマルの思念に呼応するがごとく、突如、静寂を破って甲高い声を発し、一羽の黒い鳥が茂みの中から上空指して飛び去った。


彼は飛び去る鳥の黒い影を目で追った。

黒い影は、たちまち深藍色の天空に吸い込まれるように消えていく。


それは、かのインカ帝国の旧都――クスコがある方角だった。


トゥパク・アマルは、直観した。

クスコに反乱の情報が伝わったに相違ない。


険しい眼光で上空を見据える彼の全身に、追い討ちをかけるがごとく、一陣の強風が吹きつける。

彼の纏う黒マントが、巨大な漆黒の翼のように、バサリと音を響かせながら大きく風の中に翻った。




いよいよ戦闘の真の幕開けだ――!!

月明かりを美しい目元に反射させながら、強い決意を秘めた横顔で、トゥパク・アマルは天頂を振り仰いだ。
198
最初 前へ 195196197198199200201 次へ 最後
ページへ 
ページの先頭へ