コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~
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発行者:風とケーナ
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ジャンル:ファンタジー

公開開始日:2010/06/20
最終更新日:2012/01/07 14:20

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コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~ 第12章 進軍
空き地の隅に着くと、ジャガイモと一緒に持ってきた蓆(むしろ)を敷き、その上にジャガイモを丁寧に並べはじめた。

まだ冷え込みの強い季節のうちにこの作業を終えておくことで、貴重な保存食チューニョを作ることができるのだった。


チューニョは、アンデス地帯に古来から伝わる伝統的な保存食で、冷え込みの強い夜間のうちにジャガイモを野ざらしにして霜で凍結させ、その後、真昼の強い日差しで解凍させることを3~4日繰り返し、最終的に、しっかりと足で踏みつけてよく脱水することによってできあがる加工食品である。



晴れた空に輝く月明かりがコイユールの手元を照らし、その作業の進行を助けてくれる。

黙々とジャガイモを並べているうちに、心の平静が少しずつ戻ってくる。


半分ほど並べ終えると、彼女は冷気に凍える手を軽くこすり合わせた。

そして、手元を照らしてくれる月に感謝するように、白い月を優しく見上げた。


手の平をそっと開くと、その中に月の静やかな白い光が満たされる。

その手の中の美しい光に見入る彼女の傍を、深夜の冷たい風が静かに吹き抜けていく。


まるで精霊でも現われてきそうな、幻想的な雰囲気の漂う夜の風景だった。

いっそう幻夢を誘う夜風が、周囲の草木をそっと揺らしていく音がする。


コイユールは、その優しい音に耳をすませた。

精霊の声が聞こえるかもしれない、そんな気持ちで。




そんな彼女の耳元に、風の音にしては、やや趣きの異なる規則的な音が微かに響いてきた。

それは、何か、まるで空(くう)を鋭く切るような音である。

その音の方向に視線を動かす。




空き地の少し先にある高台の一角で、サーベル片手に、一人、美しい構えで素振りの練習をしているのは…――。

それは後ろ姿ではあったが、コイユールには、すぐにそれが誰か分かった。


(アンドレス……!!)


コイユールの視線は、その姿に釘づけられた。
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