コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~
コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~
アフィリエイトOK
発行者:風とケーナ
価格:章別決済
章別決済は特定の章でのみ課金が発生いたします。
無料の章は自由にお読みいただけます。

ジャンル:ファンタジー

公開開始日:2010/06/20
最終更新日:2012/01/07 14:20

アフィリエイトする
マイライブラリ
マイライブラリに追加すると更新情報の通知など細かな設定ができ、読みやすくなります。
章一覧へ(章別決済)
コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~ 第12章 進軍
そのようなビルカパサの横で再びアンドレスが身を乗り出しかけた時、集団の端の方で、不安気な表情で場の様子をうかがっていたフランシスコが、「わたしが参りましょう…」と、意を決した声で名乗り出た。

その声音には明らかに多大な緊張が滲んでいたが、覚悟の色も見て取れる。



相変わらず神経質そうな表情をした、ひょろりとしたこの男は、しかし、理知的な雰囲気を備えており、他の野性的で猛々しい側近たちとは一味違う精彩を放っている。

アンドレスと同様、インカ族とスペイン人との混血であったが、その文化人的な雰囲気と繊細そうな風貌は、どちらかというとスペイン人によく似ていた。


このフランシスコは側近であると共に、トゥパク・アマルのクスコ神学校時代からの同窓生であり、行動的文化人的側面をも併せ持つトゥパク・アマルにとって、心許せる貴重な朋友でもあった。

また、トゥパク・アマル自身、本来はどちらかといえば物静かな寡黙なタイプの人物であったため、他の豪腕タイプの側近たちとはやや趣の異なる、この理知的で静かな雰囲気のフランシスコの存在は、彼にとってはある種の安らぎでもあったかもしれない。


実際、フランシスコは、トゥパク・アマルの息子たちの名付け親でもあった。

この時代の当地では、名付け親になることは、すなわち、義兄弟の関係を結んだ証しでもある。




トゥパク・アマルがいかにフランシスコを信頼しているかを、側近一同もよく認識していたため、彼の申し出に口を挟む者はいなかった。


トゥパク・アマルは、重大な任務を名乗り出てくれたフランシスコに、深く礼を込めた眼差しを送った。

「フランシスコ殿、そなたに、この大役、任せよう。
わたしの精鋭の部隊を、そなたの供として連れてゆくがよい」


長い付き合いになるフランシスコの心中を察し、まるでその不安を和らげるかのように、トゥパク・アマルは穏やかな声でそう言った。

そしてさらに、「もはや代官はクスコ近郊まで逃げ去っているやもしれぬ。深追いをすることはない。そなたが無事に戻ることを第一と心得よ」と言い添え、相手の瞳を真っ直ぐに見つめた。
187
最初 前へ 184185186187188189190 次へ 最後
ページへ 
ページの先頭へ