コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~
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発行者:風とケーナ
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ジャンル:ファンタジー

公開開始日:2010/06/20
最終更新日:2012/01/07 14:20

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コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~ 第12章 進軍
実際には、トゥパク・アマルは、現在ではインカの民にとってもキリスト教が重要な信仰の対象となっていることを良く認識していたため、此度の反乱の眼目の中に、キリスト教の否定は含んではいなかった。

しかしながら、モスコーソ司祭がそのような彼の思慮など汲み取ろうはずもなく、むしろ、反乱を押さえ込むために、敢えてキリスト教への反逆者に仕立て上げ、討伐の宣伝材料に利用してくる可能性はあまりに濃厚である。


手綱を強く握り締めたまま、トゥパク・アマルの表情は完全に動きを止めていたが、その頭の中では、今後の対応策をめまぐるしく模索しているさまが見て取れた。




その時、彼のすぐ傍にいた側近たちの中から、いち早く声を上げたのは、あのアンドレスだった。

「自分がすぐに代官の後を追い、捕らえて参りましょう!!
もはや一刻の猶予もなりません!」


しかし、すかさずディエゴが、それを制した。

「アンドレス、おまえには、まだ別行動は早すぎる!
まずは軍団と共にあり、己の隊をしっかりと統率できるようになることが先決だろうが!」

叱咤するような、それでいて諭すようでもあるディエゴの口調は、まるでアンドレスの父親さながらであった。



トゥパク・アマルも、そんなディエゴの言葉に同意する。

「アンドレス、そなたの心意気は買おう。
だが、ディエゴの申す通りだと、わたしも思う」


「ですが…!」

今にも馬を駆り出さぬばかりのジリジリとした眼で、アンドレスはまだトゥパク・アマルを見据えている。

「こうしている間にも、代官は逃げ延びてしまいます!!」



またディエゴが「おまえが言わずとも、分かっている!」と、たしなめるような口調で言う。

それから、「全く出すぎた奴だ」と肩をすくめてから、すぐに父親のような包容力のある眼差しに変わって、「おまえが行かずとも俺が行って捕らえてくるから、案ずるな」と、アンドレスの肩を、その岩の塊のような手で一発叩いた。



ディエゴは、改めてトゥパク・アマルに視線を返した。

そして、その巨大な隆々たる体躯を反らし、力の漲る眼光で、真正面から太く言う。

「トゥパク・アマル様、自分が行って参りましょう。
ここからクスコまでは距離もある。
今なら、まだ追いつける可能性もありましょう」
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