コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~
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ジャンル:ファンタジー

公開開始日:2010/06/20
最終更新日:2012/01/07 14:20

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コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~ 第12章 進軍
翌朝早く、隣郡キキハナへ向かう山間部の峻厳な道を進軍するインカ軍の元に、先遣隊として、いち早くキキハナへ向かっていた参謀オルティゴーサの一隊が、激しく砂塵を蹴散らしながら馬で駆け戻ってきた。


オルティゴーサは、すぐさまトゥパク・アマルの元に馬を寄せる。

そのオルティゴーサの険しい表情に、騎乗のトゥパク・アマルは瞬時に事態を察した。


「トゥパク・アマル様、キスピカンチ群の代官カブレラは既に領土を放棄し、いずれかに逃走したもようです!!」

逞しい肩を上下させて息を切らしながら、緊迫感の滲む太い声で、オルティゴーサが言う。


トゥパク・アマルもまた、やや緊迫した面差しで頷いた。

「オルティゴーサ殿、ご苦労であった」


トゥパク・アマルの言葉にオルティゴーサは恭しく頭を下げ、その場を下がる。



トゥパク・アマルは険しい目で、前方を見据えた。

手綱を握る手に、無意識のうちに力がこもる。


問題は、代官カブレラを捕らえられなかったことではなく、カブレラがこの反乱を知り、その情報を持ったまま逃走したということであった。

代官のこと――恐らく、当地からは最もスペインによる植民地支配の中枢に近いクスコ辺りを目指して、逃げ上ったに相違あるまい。


いっそう険しさを増したトゥパク・アマルの目元が、鋭く光る。



かつてのインカ帝国の旧都クスコには、今では植民地支配の中枢を牛耳るスペインの大物役人が数多くひしめいており、反乱の勃発についてクスコに知れることは、つまりは、首府リマに知られることと同義であった。


しかも、クスコには、この植民地におけるカトリック教会の頂点に立つ最高位の司祭、かのモスコーソもいる。

モスコーソ司祭がトゥパク・アマルたちを反逆者とみなす時、それは、すなわち、この国のカトリック教会にとっても逆賊とみなされることに等しい。


今やインカの民にとっても精神的支柱となっているキリスト教に反旗を翻したとみなされることは、今後、トゥパク・アマルが民意をつかむことを困難にする危険性をあまりに多分に孕んでいた。

それは、彼が最も避けたいことの一つであった。
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