コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~
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発行者:風とケーナ
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ジャンル:ファンタジー

公開開始日:2010/06/20
最終更新日:2012/01/07 14:20

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コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~ 第12章 進軍
翌朝はやくに、祖母と別れをかわし、コイユールは家を出た。

すぐに広場には向かわず、近所の親しい知人宅をめぐり、祖母のことを見守ってほしいと深々と頭を下げて回った。


それから、急ぎ足で、インカ軍の義勇兵として参戦すべく、村人たちが緊張と興奮の面持ちで馳せ参じている広場に向かう。




途中、まもなく集落の中心部にさしかかる辺りでのことである。

大通りへの脇道を走っていたコイユールの前を、突如、黒い影がよぎり、道端に積んであった藁の陰に潜り込むようにして身を隠した。


思わず足を止めて息を呑む彼女に、その藁積みの陰から押し殺した声がする。

「頼む!!
大通りの方に走っていったと言ってくれ!」


コイユールが訳の分からぬまま目を瞬かせている間にも、背後からスペイン語の荒々しい男の罵声が飛んできた。

「おまえ!!
ここで黒人の男を見かけなかったか?!」



慌てて振り向くと、餓鬼さながらの形相でこちらを睨みつけているスペイン人の中年男性が、仁王立ちになっていた。


いからせた肩で激しく息を切らしながら、見開かれたその眼は血走り、ギラギラとした強い殺気を帯びている。

身なりは貴族風だが、その男の手には、いかにも使いこまれたふうな、今にも血の滴らぬばかりの赤黒い鞭が握られている。


コイユールも走ってきたばかりで息を切らしていたが、しかし、その男の手にあるものを見て、瞬時に事態を察した。



彼女は意を決した目になり、男の脂ぎった顔面を見据えた。

「大通りの方に走っていくのを見ました」

早鐘のように打ち鳴る心臓の鼓動を悟られまいかと身を硬くしながらも、先ほど藁積みの中から言われた通りに答える。


男は憤然たる形相で、「本当だな?!」と凄んで、ギラつきを増した眼で睨(ね)めつける。

「もし偽りを言えば、おまえがどうなるか、わかっているだろうな」



凄みながら己の顔を覗き見る男の醜悪に歪んだ顔に、体の芯から凍てつくような悪寒が走る。
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