コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~
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発行者:風とケーナ
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ジャンル:ファンタジー

公開開始日:2010/06/20
最終更新日:2012/01/07 14:20

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コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~ 第12章 進軍
「おまえ、まさか、わたしのために、ここに残ろうなんて考えているんじゃあ、あるまいね?」

老婆は、いたずらっぽい微笑みを湛えたまま、さらに相手の顔を覗き込む。


思いもかけぬ言葉に、コイユールの手から、もうすっかり錆付いたスプーンがこぼれ、小さな音を立てて皿の上に落ちた。



コイユールは、目を見開いて、祖母の顔を驚いたように見つめる。


老婆は、相変わらず笑みを浮かべたまま、彼女の瞳に応えるように言う。

「おまえは、誇り高いインカの娘だろう。
今、皇帝様を助けないでどうするんだい!」


わざと大袈裟な表情をつくってみせる祖母に、コイユールの胸が熱くなった。

「おばあちゃん…!」

彼女は、身を乗り出すようにして、祖母を見据えた。



老婆は皺だらけの顔に満面の笑みを浮かべて、何度も頷いている。

「わたしの事なら、心配しなくていいんだよ。
自分のことぐらい、自分でできるさ。
それより、おまえは皇帝様と力を合わせて、早くこのひどい生活を何とかしておくれ」


相変わらずおどけたように言う祖母の口調に、自分の不安を取り去ろうとしてくれているのだと察せられて、コイユールの心はいっそう切なくなった。

彼女の揺れる瞳から、思わず涙がこぼれそうになっている。



祖母は、優しい眼差しになって、孫娘の髪にそっと触れた。

「コイユール。
おまえは、おまえが生きたいように生きておくれ」


老婆の目にも、うっすらと涙が滲む。

そして、再び、おどけたような口調で、「わたしがもう少し若かったら、一番乗りで、皇帝様のところに馳せ参じているところなんだけどねえ!」と言って、笑った。
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