コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~
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発行者:風とケーナ
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ジャンル:ファンタジー

公開開始日:2010/06/20
最終更新日:2012/01/07 14:20

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コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~ 第12章 進軍
その頃、コイユールは、やはり考えがまとまらぬまま、それでも、ともかくも小屋に戻り、祖母のために夕食の支度をすませた。


今日も昨日も、足腰の弱った祖母は、広場には出向いていなかった。

しかし、昨日からの広場でのトゥパク・アマルの一連の動向については、すっかり村中の噂になっていたから、事態のおおよその成り行きは祖母も知っていた。


だが、そのことには、祖母もコイユールも何も触れずに過ごしていた。






そして、今、やはり、そのことには触れられぬまま、窓も無い薄暗い小さな一間の小屋の片隅で、二人はいつものように質素な食卓を囲んでいる。

蝋の少なくなった小さな一本の蝋燭の向こうで、皺だらけになった顎のあたりを一生懸命動かしながら、湯で柔らかくした干したジャガイモの切片を歯茎で噛んでいる祖母を見る。


皿の傍に力なく添えられた枯れ枝のように痩せ細った、その祖母の指や腕が痛々しい。

そんな祖母を前にして、自分がこの家を出てインカ軍に加わりたいなどとは、コイユールにはとても言えなかった。



己の方に注がれる苦し気な孫娘の視線に、もう随分前から気付いていたように、だが、まずは慎重にジャガイモを喉に流し込んでから、ゆっくりと老婆は顔を上げた。

突然目が合って、コイユールの鼓動が速まる。


老婆は皺だらけの目元に笑みを浮かべた。

そして、少し探るような眼差しになって、コイユールの瞳を覗く。


コイユールは、どんな表情を返したらいいのか戸惑いながら、小さく微笑んだ。

すると、ふっと、老婆の顔に、いたずらっぽい色が浮んだ。



意外な祖母の眼差しに、コイユールは目を瞬かせ、「おばあちゃん?」と、思わず問いかける。
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