コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~
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発行者:風とケーナ
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ジャンル:ファンタジー

公開開始日:2010/06/20
最終更新日:2012/01/07 14:20

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コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~ 第12章 進軍
そして、アンドレスもまた、トゥパク・アマルの屋敷の広間の窓から、一人、風の吹きぬける戸外を見ていた。

すっかり夜の帳がおりた広大な庭の随所では、松明の炎が風に煽られ、上空に舞い上がっては夜闇を焦がしている。


屋敷には、間もなくトゥパク・アマルの有力な同盟者の一人、インカ族の豪族オルティゴーサが到着する予定になっている。

それを待つほんの束の間だったが、トゥパク・アマルら館の者たちは、ひとときの一人の時間をそれぞれに過ごしていた。


トゥパク・アマルも、今は書斎に一人で入っている。




アンドレスは、窓の向こうの遥か集落の彼方まで、遠く視線を向けた。

それは、コイユールの家のある方角だった。




その瞳が微かに揺れる。

コイユールのことだ、きっと、あの広場に来ていたに相違ない…。
どう感じ、そして、今、一体、何を思っているのだろうか。


窓辺に添えられた指先に、力がこもる。

馬を走らせれば、ここから30分もかからぬ距離にいるのだ。
今まではアリアガを見張っていたが、今なら――!

彼は思い切ったように、足早に戸口に向かいはじめた。



それをすかさず、トゥパク・アマルの腹心ビルカパサが制する。

「アンドレス様、どこに行かれます?」

アンドレスを見るビルカパサの目は、完璧なまでに感情の統制がなされており、決して冷たいわけではないのだが、目的遂行以外の情の挟む余地を全く与えぬ色である。

「まもなく、オルティゴーサ様がお着きになられます。
今暫く、お待ちを」


まるで己の心を見透かすようなビルカパサの視線を、アンドレスは思わずそらす。

「すぐに戻ります」


アンドレスの不可解な挙動にビルカパサはいっそう見据えるような眼差しで、「ならば、どこに行かれるのか教えてください。トゥパク・アマル様にお伝えしておきます」と、婉曲的に牽制してくる。


アンドレスは、ぐっと言葉に詰まった。
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