コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~
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発行者:風とケーナ
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ジャンル:ファンタジー

公開開始日:2010/06/20
最終更新日:2012/01/07 14:20

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コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~ 第12章 進軍
中央広場から集落のはずれにある彼女の小屋までは、軽く見積もっても1時間以上の距離があった。


集落の中心部を抜けるとき、教会の傍のアンドレスの館の前を通りかかる。
無意識のうちに、コイユールの足が、ふっと止まった。



門の傍でその美しい西洋建築をそっと見上げると、不意に自分の名を呼ぶ、あの少年の日のアンドレスの声が聞こえてくる気がする。

胸の前で握り締める彼女の手が、微かに震えた。


コイユールは揺れる瞳で、今は灯りもともっていないニ階の部屋の窓を見つめた。
かつて二人で語り合った日々が、あまりにも懐かしく、切なく思い出され、彼女の胸をそっと締めつける。


その思いを振り払うようにして、また小屋への道を走りはじめた。




コイユールが、自分の小屋のある集落はずれに戻ってくる頃には、すっかり日も傾きかけていた。


前方の空にはそろそろ寝座(ねぐら)に戻るのだろうか、黒い影のような一羽のコンドルが、山脈の方へと滑るように飛び去っていくのが見える。

その瞬間、彼女の脳裏に、あの広場で見たトゥパク・アマルの姿が、その声が、その言葉が、ありありと甦ってきた。


再び、胸の前で両手を祈るように硬く結び合わせる。

「トゥパク・アマル様……!」

彼方へ飛び去るコンドルを見つめる彼女の瞳の中にも、静かな炎が燃え上がる。


『たとえ皇帝陛下が生きていたとしても、スペイン人から闘って勝ち取らなければ、この国はインカの人々の手には決して戻ってこない!』


ずっと昔、アンドレスがそう語った言葉通り、今、まさにそれが動き出そうとしているのだ。
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