コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~
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発行者:風とケーナ
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ジャンル:ファンタジー

公開開始日:2010/06/20
最終更新日:2012/01/07 14:20

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コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~ 第2章 ビラコチャの神殿
すっかり日が落ちて夜の帳がおりる頃、コイユールは自分の住む集落に戻ってきた。

先ほど神殿で見た光景の鮮烈さに、まだ頭がボウッとしている。


この辺りは、日が落ちると急速に気温が下がる。

コイユールは両手で細い腕を抱くようにして、家路を急いだ。
すっかり体が冷えきっている。



まもなく彼女は、アドベ(干し煉瓦)造りの小さな小屋にたどり着いた。

小屋には窓は無く、ただ一つ、台形の入り口がついている。
インカ時代とあまり変わらぬ、昔ながらの素朴で質素な造りの家だった。

インカ当時と異なっていることといえば、入り口にかろうじて板の扉がついていることくらいであろうか。
インカの時代には、入り口には布を垂らしているだけだったのだ。


コイユールは入り口のところで軽く衣服についた草をはらってから、夜の冷気から逃れるように、急いで扉の中に入った。

「ただいまあ」


かじかんだ手をこすり合わせている彼女を、優しい笑顔の老婆が迎えた。
コイユールの祖母である。


老婆は痩せた小柄な体に古衣を何枚か重ねて身にまとっているが、灯りとりの蝋燭と小さく燃える焚き火くらいしか火の気の無いこの部屋では、寒さは骨まで染みているに違いなかった。

黒ずんだ褐色の手や顔には深い皺が刻まれ、つやの無い白髪を後ろで一つに束ねている。


小屋は小さな一部屋の造りで、床には古びた布が敷いてあり、あとは木の質素なテーブルと椅子があるくらいで、他に家具らしいものは見当たらなかった。


「どうだったね。
神殿に行ってきたんだろう」

老婆は穏やかに問いかけながら、いつもと変わり映えのない夕飯の皿をコイユールに手渡した。
その手首はひどく痩せ細っており、まるで枯れ枝のようだ。

「うん…」

コイユールは曖昧に返事をしながら、その色あせた皿を受け取った。


皿の上には黒っぽい色をしたチュウニョが、もうしわけ程度に乗せられている。

それは野ざらしにしたジャガイモを霜で凍結させ、真昼の強い日差しで解凍させた保存食品で、この地域の貧しい農民たちの一般的な食糧である。
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