コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~
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発行者:風とケーナ
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ジャンル:ファンタジー

公開開始日:2010/06/20
最終更新日:2012/01/07 14:20

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コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~ 第2章 ビラコチャの神殿
彼女の視線の先で、人影はゆっくりと神殿内から外へ歩み出てくると、神殿の壁に片手を添えて、遥か山の端に沈もうとしている太陽の方を眺めやった。


西に傾いた黄金色の陽光は、銀雪を抱いた山頂を染めながら、ひときわまばゆい輝きを放つ。

その瞬間、そこにいる人物の姿がくっきりと照らし出され、コイユールは大きく息を呑んだ。




それは、凛々しい風貌のインカ族と思われる男性であった。


引き締まった肢体に巻きつけられた黒ビロードのマントが、風に翻っている。

帯を締めた腰のあたりまである長い黒髪も、日暮と共に冷気を増した風の中に舞っていた。
その足元では、靴の側面にはめられた金の留め金が、陽光を反射して鋭い閃光を放っている。



コイユールは、息することも忘れて、その姿に恍惚と見入った。

(まさか……)

ビラコチャの神様が天から舞い降りたのかしら、それとも、遠い昔話の中で聞かされたインカ皇帝様が生き返ったの?!


まだ12歳になったばかりの少女の目には、その鮮烈な光景は、そんな思いをかきたてるのに十分過ぎた。



高鳴る胸を押さえる彼女の視界の中で、その人の端正な横顔に西日が降り注ぎ、瞳が金色に反射した。

研ぎ澄まされた目元には力がみなぎり、光を受けて、まるで炎が燃えているかのようだ。
それは激しく、情熱と怒りに満ちているようにも見え、それでいて、どこまでも深い悲哀を帯びているかのようにも見える。


さらに陽が傾くにつれて朱色が増し、その人影をいっそう染め上げていく。

さながら全身が黄金色の炎に包み込まれていくかのように――。





どれほどの時間が経っただろう。

あるいは、ほんの一瞬の出来事だったのかもしれない。


自分の胸の鼓動のあまりの高鳴りに、我にかえったコイユールは、慌てて目をこすった。

(私、幻を見ているのかもしれない……!)

一度、ギュッと目をつぶって、頭を振り、それから、再び目を見開く。
そして、さきほどの人影の方にもう一度目をやった。



が、そこには、もう誰もいなかった。

ただ、深い茜色の天空を、一羽のコンドルが高く飛び去っていった。
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