コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~
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発行者:風とケーナ
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ジャンル:ファンタジー

公開開始日:2010/06/20
最終更新日:2012/01/07 14:20

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コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~ 第10章 反乱前夜
「村で待て、と。
王陛下の御言葉は、それだけだ」

冷淡な声でアレッチェが言う。
彼は、じっとトゥパク・アマルの上に視線を向け、その反応を観察する。

トゥパク・アマルは微動だにせず、変わらぬ姿勢のままだった。
その気配も変わらない。


しばしの沈黙が流れる。



微動だにせぬまま、だが、実際には、真紅の絨毯に視線を落とすトゥパク・アマルのその目は、引き裂かれぬばかに険しく見開かれていた。
鼓動が速くなり、己の手足が微かに震えてくるのが分かる。

突き上げてくる憤怒、失望、悲愴、そして、最後の箍(たが)がはずれる感覚――。




様々な感情が怒涛のごとく渦巻き、彼の心を掻き乱した。

しかし、アレッチェに、それを悟られてはならぬ。



トゥパク・アマルは、激情に翻弄されるもう一人の自分を押さえ込みながら、己の気を、呼吸を、声音を統制した。

「王陛下へのお目通りは、叶わぬでしょうか」


トゥパク・アマルの声は、不自然なほどに静かだった。
だが、それ故、かえってその中に滲んでいる感情の色味を、アレッチェは決して見逃さない。
さすがのトゥパク・アマルも、動揺しているのだ。



アレッチェは、いっそうの酷薄さで、「そのようなことが、一介のカシーケごときに叶うはずがあるまい」と答え、トゥパク・アマルを睥睨したまま冷笑した。

その瞬間を見逃さぬとばかり、トゥパク・アマルが顔を上げる。
彼の目の中に、冷たく笑う制圧者の表情がはっきりと映った。


トゥパク・アマルもまた、冷徹に目を細めた。
そして、スッと立ち上がる。

すぐ直近の距離で、いきなり己と同じ目線に立たれ、一瞬、アレッチェは身をひるませた。
トゥパク・アマルは無言で、相手の目を、あの射抜くがごとく鋭利な眼光で睨み返す。
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