コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~
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発行者:風とケーナ
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ジャンル:ファンタジー

公開開始日:2010/06/20
最終更新日:2012/01/07 14:20

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コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~ 第10章 反乱前夜
礼拝堂を模した優美な装飾の施された縦長の飾り窓からは、西に傾きかけた陽光がうっすらと射し込んでいる。
その光は壇上に立つスペイン人、アレッチェの上にも斜めに注がれ、その影を黒々と長く引いていた。

アレッチェは壇上から、副王名代である己の前に跪き、副王からの返答を待つトゥパク・アマルを、尊大な面持ちで睥睨した。
彼の、いかにもスペイン人らしい彫りの深い横顔で、冷酷な眼が探るように光る。

トゥパク・アマルは跪いたまま下を向いており、アレッチェにはその表情は読めない。



一方、トゥパク・アマルは目を閉じたまま、じっと副王からの返答が伝えられるのを待った。

副王からの返答いかんによって、反乱を決行する――!!

その決意は、今や彼の中では明確だった。
もはや、これ以上、時を失うことはできない。
これ以上、理不尽に民を虐げられるままにしておくことはできないのだ。


トゥパク・アマルはゆっくりとその顔を上げた。
何かに憑かれたような危うい眼差しである。

アレッチェもまた、あの射竦めるような眼光でトゥパク・アマルを見据えた。


「王陛下の御返事をお聞かせください」

トゥパク・アマルの、その不気味に流麗なスペイン語が、アレッチェの中のえもいわれぬ不快感をまた刺激する。


トゥパク・アマルを前にすると、なぜこのように不穏な、妙に落ち着かぬ心境になるのか、アレッチェ自身も理屈では全てを説明しきれなかった。
スペイン人としての高い誇り――他のヨーロッパ諸国さえ震撼させうる比類なき卓越した民族であるとの、その確固たる信念、己の自意識を、妙に引き下ろしてくるような、何か異様に突き崩してくるものを、このインディオはもっているのだ。



アレッチェは跪いているトゥパク・アマルのすぐ目の前まで、わざとらしく近づいてきて、そして、居丈高に腕を組みながら、いかにも蔑むような目つきで見下ろした。

トゥパク・アマルは冷ややかに目を細め、それから、再び真紅の絨毯の上に視線を戻した。
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