コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~
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発行者:風とケーナ
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ジャンル:ファンタジー

公開開始日:2010/06/20
最終更新日:2012/01/07 14:20

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コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~ 第10章 反乱前夜
さて、この頃、かのトゥパク・アマルの動向はどのようになっていたであろうか。


その日、彼は首府リマのインディアス枢機会議本部の一室にいた。

目の前には、あの男、植民地全権巡察官ホセ・アントニオ・アレッチェがいる。


トゥパク・アマルが随分前にしたため、副王ハウレギに提出した嘆願書への回答が、やっとこの日、伝えられることになっていたのだ。
あのミタ(強制労働)の改善を訴えた、自らの渾身の思いを注ぎ込んだ嘆願書を提出してから、もう2年近くの歳月が流れていた。





返答を得られぬまま、いたずらに時が過ぎることに堪り兼ね、彼は数週間前より副王のいる首府リマを訪れ、副王との接見を願い出ていた。

しかし、たとえインカ皇帝の直系の子孫とはいえ、今やカシーケ(領主)の身分に過ぎぬトゥパク・アマルには、副王との目通りなど叶おうはずはなかった。
その代わりに、副王の名代との接見が許された。

だが、接見のこの日、副王の名代として現れたのが、よりによってこの男とは。


トゥパク・アマルは、跪く(ひざまず)く己の眼前に立ち、腕を組んで己を見下ろしているアレッチェの気配を感じながら、その回答が決して期待できるものではないことを悟った。




その一室は、さすがに副王による御言葉を伝えるにふさわしい厳かな礼拝堂のような造りになっており、床には真紅の絨毯が、入り口から中央の祭壇風の壇上まで続いている。

トゥパク・アマルの纏う黒ビロードの艶やかなマントが、真紅の絨毯にくっきりと映えていた。
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