コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~
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発行者:風とケーナ
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ジャンル:ファンタジー

公開開始日:2010/06/20
最終更新日:2012/01/07 14:20

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コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~ 第9章 若き剣士
「奇襲を成功に導ける天才的な戦略家など、実際、何百年に一人出るか出ないかだ。
残念ながら、トゥパク・アマルも、俺が見る限り、そこまでの戦略的天才ではない」

その声には嫌味な感じが全く無く、非常に冷静であっただけに、アンドレスの中にいっそう不穏な気持ちをかき立てた。


「トゥパク・アマル様では、駄目だと?」

冷静を装うアンドレスの声が、微かに揺れている。

「トゥパク・アマルが駄目というのではない。
ただ、そういう天才は、きわめて稀だと言っているのだ。
だが…」

それから、酒を置いて、アパサは真正面からアンドレスに向き直った。

アンドレスも、つられるように姿勢を正す。


「武器で著しく劣るインカ軍が勝つためには、奇襲が必要な時がくるだろう。
残念ながら、我々は天才ではないかもしれん。
だが、的確な情報収集と正確な分析、時機をとらえた果断な行動、押さえるべき要件を押さえることで、少なくとも奇襲の成功率を高めることはできる」

まるで未来を予見するがごとくのアパサの厳然たる言葉に、アンドレスは、その教えを深く我が身に落とし込むように力強く頷いた。






やがて、アンドレスがこの地を訪れて2度目の春が過ぎた。

この時、既に彼は17歳。
アパサの厳しい鍛錬のもと、彼は見違えるように逞しい若者に成長していた。


そして、その年の夏も過ぎる頃、アパサの指導は、それまでとはやや趣向の異なるものとなっていた。

実際、ここにきてアンドレスの成長は目覚しかった。
1年半に及ぶ過酷なトレーニングの継続により基礎的な身体能力は高められ、アパサが徹底的に基本を叩き込んだ成果も実を結び、今や彼は棍棒をまるでサーベルのごとく軽々と自在にさばきながら、複数の相手を同時に圧倒するまでになっていた。

アパサが心理戦に持ち込もうとも、以前ほど動揺することも無くなっていた。



円陣訓練で、アパサの部下たちをまとめて片付け、丁寧に汗の処理をしながら呼吸を整えているアンドレスに近づき、アパサはおもむろに言った。

「これからは、美しく、ということを念頭に置いてやってみろ」


アンドレスは一瞬、耳を疑った。

どちらかと言えば、いかに泥臭く、血生臭くとも、何が何でも敵を倒す、ということを叩き込まれてきたのだ。
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