コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~
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発行者:風とケーナ
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ジャンル:ファンタジー

公開開始日:2010/06/20
最終更新日:2012/01/07 14:20

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コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~ 第9章 若き剣士
アパサは、いつものようにチチャ酒の樽の方に酒をつぎに立った。
そして、二人分の酒をついできて、アンドレスの前に差し出す。

「おまえも、たまには飲め」

アンドレスは軽く礼を払って、波々と酒がつがれたカップを受け取った。


チチャ酒は古来からアンデス地帯で愛飲されている、伝統的なトウモロコシを原料とする酒である。
アパサはチチャ酒を一気に飲み干して、さっさと二杯目をつぎに立つ。

アンドレスもカップを傾けて、まだあまり飲みつけぬ酒を喉に注ぎこんだ。
口いっぱいに、酸味のある葡萄のような味が広がっていく。



「いずれにしても、火器が無い状態でいかに戦うかを考えておく方が先決だ」

二杯目をあおりながら、アパサが話の続きをはじめる。

「地勢や気象条件をうまく使うこと。
これは、当然のようだが、意外と侮れん。
それから、接近戦に持ち込むとうい方法もある。
他は?
おまえなら、どうする?」

再び、アパサが問う。


火器が無い状態で、火器を大量に保持する敵といかに戦うのか――そのアパサの問いに、アンドレスは、やはり普段から考えていたことをそのまま答えた。

「奇襲です」

「奇襲?」

アパサが、色の見えない声で応じる。

「はい」


能面のような表情で、アパサは相手の目を覗く。
しかし、すぐに、にんまりと、アンドレスには意味を解(げ)しかねる笑みを浮かべた。

「おまえは真正面から行くタイプだと思っていたがね」

「ずるくなれと言ったのは、アパサ殿ではないですか」

思わずアパサは苦笑した。
が、すぐに冷ややかな眼差しに戻った。



不意に蝋の無くなった蝋燭が消え、真っ暗闇に包まれる。
蝋の臭いが部屋の中に立ち込めた。


「残念ながら、奇襲も、そう簡単ではないな。
恐らく、火器を手に入れるよりも難しいかもしれん」

アパサが闇の中で話すのを聞きながら、アンドレスは席を立った。


そして、既に我が家のように把握しているその部屋の棚の一角から、真新しい蝋燭を取り出し、火をつけた。

室内が、新たな炎で照らし出される。



「戦場で最も敵が弱点とする要件を見抜いて奇襲をかけるには、天才的戦術を必要とするものなのだ。
そして、かなりの強運もなければ駄目だ。
わかっているのか、おまえは」

アパサは、溜息とも取れる息を吐いた。
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