コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~
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ジャンル:ファンタジー

公開開始日:2010/06/20
最終更新日:2012/01/07 14:20

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コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~ 第9章 若き剣士
さらに、アパサの指導は、武術的な特訓に留まらなかった。

火器を持つことを一切禁じられているインカ軍が、鉄砲、大砲などの火器を多量に投入して対抗してくるスペイン軍にいかにして立ち向かうのか。
実際、それは、トゥパク・アマルの頭を今も深く悩ませていることであった。

しかし、いかに智略に長けたアパサと言えども、それは容易に解答を出し得ぬ難問だった。


今、アパサにできることは、アンドレスが戦場で兵を率いる将となった暁に、最も的確な判断と決断が行えるよう、アパサ自身の中に蓄積されてきた一般的な戦術を最大限に指南するのみであった。
あとは、その場の実際の戦況に応じて、臨機応変に対応していくしかないのだ。




今宵も、彼は燭台の灯りの下に地勢図を広げ、武術指導と変わらぬ厳しい面持ちでアンドレスの前に座っている。


「平地での戦いでは、高地は常に戦略的要地となる。
高地は敵陣地を瞰制できる上に、守備陣地としても、攻勢にでる際の発起点としても、有利だからだ」

アンドレスは頷いた。
アパサは、さらに続ける。

「だが、この国はアンデス山脈が連なり、高地や山が連綿としている。
こうした土地柄では、高地を占拠することが、逆に命取りになることもある。
なぜか分かるか?」


アンドレスはまた頷いて、地勢図の中の一つの山脈の周りを指でなぞった。

「高地の周りにあるこの低地を敵に占領されてしまったら、高地に陣を張った部隊は包囲されてしまいます。
しかも、後方にも山々があり、かえってそれが障害物となって、退路を絶たれてしまいましょう」

「そうだ。
そうなると、どうなる?」

「味方の補給は絶たれ、降伏せざるを得ないと思います」

アパサは冷厳な声で問う。

「そうなったら、おまえは敵に降伏するのか?」


アンドレスは蝋燭の向こうで、冷たい面差しを向けている師の顔を見た。

「実戦は、必ずしも理屈が通らんこともある。
場合によっては、不利になることを承知で、この地形でも高地に布陣せねばならん戦況も出てくるだろう。
その状況でも、なお粘り強く敵を落とす策をあみ出すか、それが無理なら、敵を突破してでも退路を開くぐらいの気概が無くてどうする」


アンドレスは息を詰める。


「まあ、いい」と、舌打ちして、アパサはまた地勢図に視線を戻した。
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