コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~
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発行者:風とケーナ
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ジャンル:ファンタジー

公開開始日:2010/06/20
最終更新日:2012/01/07 14:20

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コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~ 第9章 若き剣士
さらに時は流れ、アンドレスが当地に来て、はや半年が過ぎていた。



最近では、アパサは自らも棍棒を手に、彼の相手をするようになっていた。


アパサの攻撃は常に、アンドレスにとって、単にその技術的な未熟さを突きつけるに留まらず、むしろ心理的に突き崩してくる種類のものだった。

アパサは、己の攻めが利く部分には敢えて攻撃をしてこなかった。
かわりにアンドレスが最も得意とする技や、最も強い部分、そして、アパサにとっては斬り込みにくいであろう部分を、逆に狙って攻めてくるのだった。

アンドレスにしてみれば、常に自分の自信のあるところを攻め立てられ続けるため、逆に心を攻め込まれた気分になってくる。
そのような彼の恐れや惑いをアパサは瞬時に読み、後は軽くさばいてあっさり勝利した。



アパサは冷ややかに、相手を見下ろした。

「単にやれと言われたことをそのままやっているだけでは、強くなどなれんぞ。
常に、頭を使え。
技の問題だけではない。
敵の心を攻め切って、勝て」

アンドレスは幾度となく聞かされてきた師の言葉に、苦々しい思いで「はい」と答える。


「どのように強大に見える敵でも、常に隙が無いなどということは絶対に無い。
相手の心を読み、相手の嫌がることをしろ」

彼はアパサを、改めて見上げた。
アパサの目は不遜ではあったが、ひどく真面目でもあった。


「敵を斬るには、何が必要か。
それは、敵を崩すこと。
では、どうすれば崩れるのか?
常にそれを考えろ。
いいか。
これは、戦場だけのことではない」

そして、少し言葉を切り、また続ける。

「おまえもだが、トゥパク・アマルも、あまりに真っ向からクソ真面目にいきすぎる。
時に廉潔は命取りになる。
それだけではない。
味方さえ危険にさらしかねんのだ」

それから、アンドレスを見据えて言う。

「アンドレス、おまえはもっとずるくなれ」


アンドレスは返事に詰まった。
が、何か、アパサは重要なことを言おうとしているのだ。




武器を手にしたまま、アパサは空を見上げた。

「そろそろ、また冬がくる。
トゥパク・アマルはいつ動くのか…」

アパサは独り言のように呟いた。


アンドレスも、つられるように空を見上げる。




乾いたこの土地の秋空は、まるで吸い込まれそうに高く、眩暈を誘うほどに澄んでいた。
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