コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~
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発行者:風とケーナ
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ジャンル:ファンタジー

公開開始日:2010/06/20
最終更新日:2012/01/07 14:20

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コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~ 第9章 若き剣士
多分、彼女は摘んできた花を生けにきて、いるはずのない自分と鉢合わせてしまったのだろう。
アンドレスはすぐに状況を察して、「驚かせてすまない。怪我をしてしまって、手当てに来ていたのです」と、アンヘリーナを気遣うように優しく声をかけた。


「私こそ、すいません…。
ノックもしないで……。
いらっしゃると思いませんでしたので」

そう擦れた声で答えると、アンヘリーナは膝をついて、落とした花を拾いはじめた。


少女は、よほど驚いてしまったのか、まるで震えているかのように儚く見えて、アンドレスは心配になってしまった。
彼はドアの方まで行って、一緒に花を拾った。

「驚かせてしまって、すまなかったね」

アンヘリーナはほとんど顔も上げられないような状態で、「とんでもございません」と、小さく呟いた。


その時、彼女は初めてアンドレスの怪我に気付き、はたと顔を上げた。

「アンドレス様、その腕…!」

アンドレスは苦笑して、「情けないことです。自分で、自分の腕を打ってしまうとは…」と、ありのままを話した。


アンヘリーナは顔を上げたものの、逞しく鍛えられた上半身をはだけたままのアンドレスを直視できず、サッと恥らうように目をそらした。

アンドレスも、彼女の様子にハッとして、急いで上着を羽織った。


しばし、沈黙が流れる。



「手当ていたしましょう」

やがて少女は小さく呟くと、アンドレスの左腕から丁寧に血を拭き取り、引き出しの中から薬草を取り出して塗ると、器用に布で巻いて仕上げた。

彼はアンヘリーナの手際良さに感心しながら、「ありがとう」と心をこめて礼を述べた。
アンヘリーナは伏し目がちなまま、「いえ…、当然のことですわ」と小さく答え、彼からスッと離れると、先ほど落とした花を丁寧に整えて窓辺に生けた。


「いつも、花をありがとう」

アンドレスの言葉に、アンヘリーナはうつむき加減なまま、そっと微笑んで、深く礼をすると急いで部屋を立ち去った。



アンドレスは窓辺に生けられた花に目をやった。

可憐な野の花が、夏の光の中でキラキラと優しい光を放っていた。

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