コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~
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発行者:風とケーナ
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ジャンル:ファンタジー

公開開始日:2010/06/20
最終更新日:2012/01/07 14:20

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コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~ 第9章 若き剣士
重い棍棒を手に、何十回となく移動しては斬る、その一連の動作を繰り返すアンドレスの額からは幾筋もの汗が流れていた。
息も荒くなっている。

「止まれ」

アパサが低く言う。


ゆっくりと動作を抑えていくと、いっそう汗がほとばしり出る。
アンドレスは、額にはりついた前髪の隙間から、相手の方に視線を上げた。
肩で激しく呼吸をしながらも、だが、まだその目は死んでいない。

アパサは、その目の色を確かめるように見下ろし、「自分の右胸を突くようなつもりで、前に出てみろ」と、静かな声で言った。


アンドレスは、その言葉通りに実行してみる。
次の瞬間、棍棒が鋭い音と共に、火花を散らして宙空を激しく斬り裂いた。
アパサは深く頷いた。

「よし。
その感じだ!」

アンドレスも、その瞬間、確かに手応えを覚えた。


再び、構えから斬り込みまでの一連の動作を繰り返す彼の姿を、アパサは無言で見つめる。

少しは形になってきたか。
もともと筋が悪いわけではないのだ。
アパサは目を細める。

ただ、それ以上に、アンドレスの素直さと純粋さが、アパサの指導を、まるで海綿が水を吸い込むかのごとくに吸収していく素養となっていた。



「止まれ!」

アパサはアンドレスの動きを制し、それから、相手の右手首を荒々しく掴んだ。

「この手で、棍棒を握り締めすぎている。
もっと力を抜け」

「はい!」

一体、さっきから何時間、宙空を斬り続けてきただろうか。
さすがに視界が霞んできて、朦朧とした意識のままアンドレスは返事をした。


アパサは、そんな様子に頓着せぬふうに淡々と説明する。

「手の先に頼るな。
右腕の肩、ひじ、手首、その3つの関節をムチのようにしなやかに使うのだ」

そして、「そのためには、何が必要かわかるか?」と、さらに質問を投げてくる。
アンドレスは既に思考力も無く、「それは…」と、言葉に詰まる。

「手首の筋力だ。
おまえが毎朝していることだ。
雑巾を絞るのは、手首を鍛えるのにはもってこいだ」

アンドレスは、霞んだ視界の中でアパサがいたずらっぽく笑うのを見た。



それから、改めてアンドレスの目を真正面から見据えた。

「可能性を信じきれ。
それが、強くなるための第一の要件だ」
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