コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~
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発行者:風とケーナ
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ジャンル:ファンタジー

公開開始日:2010/06/20
最終更新日:2012/01/07 14:20

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コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~ 第9章 若き剣士
アンドレスの構えから斬り込みに至る一連の動作を苦々しい表情で見やりながら、「全く駄目!」と、アパサは相変わらず手厳しい。

確かに、口は悪いし、荒っぽい男ではあった。
しかし、その指導は、思いのほか丁寧なものだった。


「腕を使って敵を斬る、確かにそうかもしれん。
だが、その腕を支える上半身を動かすのはどこだ?
それは、下半身、足の力だ。
地に正しく立ち、地を足が押し、そのエネルギーが武器の先まで有効に伝わるように振れ。
それが無駄の無い攻撃に通じる近道なのだ」

そして、言葉を継いだ。

「足で、斬れ!!」


それから、さらに少し間を置いて、アパサは鋭利な眼光でうそぶいた。

「立ち方、足さばきが、どれほど重要か少しはわかってきたか?
まさに基本こそが奥義なのだ――おまえにもいずれ、そのことが分かる日が来るといいがね」

そう含みをもたせて言葉を切る。

そんなふうに言いながらも、自ら手本の動作をとって見せるアパサの一挙手一動を、一つも見逃さぬ、聞き逃さぬ、とばかりの真剣な横顔でアンドレスは力強く頷いた。




こうして、基礎の基礎から徹底的に叩き込むアパサの特訓がはじまった。

基本こそが奥義――アパサの言葉に、アンドレス自身の中でも、訓練への意気込みは高まっていく。
その境地を己の体と心で、しかと体得してみたい!!


アンドレスは自らの気力の高まりを実感していた。
そんな彼が早朝の日課の雑巾がけをすませると、アパサもまた、商用の客人のいない隙を見計らっては、よく彼につきあった。

「頭から突っ込んでるぞ!」

「腰がひけてる!
足が出てない!」

「右手で棍棒を握り締めすぎっ!」

「…ったく、何度も言わせるな!!」

裏手の空き地の方からは、始終、アパサの厳しい声が屋敷の方まで響いていた。


そんな毎日のことに、アパサの妻も、アンドレスの護衛の者たちも心配そうに遠巻きに見守っていたが、思いもかけず熱心なアパサに、ここは委ねようという空気になっていた。

そして、今日も、構えから移動、そして仮想の敵を斬る、その一連の動作をさせながら、「腰から移動!腰から前!」と、掛け声なのか叱責なのかわからぬアパサの檄が飛ぶ。
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