コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~
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発行者:風とケーナ
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ジャンル:ファンタジー

公開開始日:2010/06/20
最終更新日:2012/01/07 14:20

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コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~ 第9章 若き剣士
朝食をすませると、アパサは、早速、アンドレスを屋敷の隅にある納屋へと連れていった。
そして、中に入ると、一組のバケツと雑巾を取り出した。

「ほれ」と、アンドレスの前にそれを突き出す。

アンドレスは訳のわからぬまま、それらを受け取った。


「俺は、お前のお相手ばかりしていられるほど、いい身分じゃあないんだ。
家業の商売も、はっきり言って繁盛していて、十分に忙しい。
だから、基本的には、自分で、自分を鍛えろ」

「それは、わかりますが…」

とはいえ、そのことと、これらバケツと雑巾が、一体、どうつながるのか。


そんなアンドレスの様子に、アパサは苛々しながら「お前は頭も悪いのか!」と、相変わらずひどく口も悪い。

「これから、毎朝、屋敷の床をそれで拭け」

アンドレスは耳を疑った。



そんな様子にはお構いなしに、アパサは一人で屋敷の方に戻りはじめる。
バケツを手にしたまま、アンドレスは急ぎアパサの後を追う。

「これは、どういう意味でしょうか?」

アパサはくだんの冷ややかな眼光で一瞥し、「それくらい、自分で考えろ。おまえ、さっき、何でもすると言ったろう」と、吐き捨てるように言い放つ。

それから、「よおく、雑巾は絞って拭くんだぞ!」と付け加え、さっさと仕事場へと消えてしまった。





仰天したのは、アパサの妻バルトリーナだった。

ふっと家業の手を休めて顔を上げると、あの『トゥパク・アマル様、ならず、インカ皇帝様の甥であるアンドレス様』が、自分たちの屋敷の床を雑巾で磨いているではないか。


目を見張っていたのは、バルトリーナだけではなかった。

アンドレスのおつきの護衛官たちは当然だし、アパサの部下たちさえも、『皇帝陛下からおあずかりした若様』が床を雑巾で拭いている姿に顔を青くした。

アンドレスの護衛官たちなどは、昨日の無謀な挑み合いから、既にアパサへの不信感を募らせていたため、この期に及んでは、もうすっかり気色ばんで、客人と商談にいそしむアパサの方をはっきりと睨みつけていたほどだった。



バルトリーナは、アンドレスの方に素っ飛んでいった。

「アンドレス様、どうか、このようなことはお止めくださいませ!!」
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