コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~
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ジャンル:ファンタジー

公開開始日:2010/06/20
最終更新日:2012/01/07 14:20

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コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~ 第9章 若き剣士
ちなみにアンドレスにとって修行の場となるこのシカシカの集落は、インカの始祖伝説の残る神秘の古代湖、ティティカカ湖近隣の地にあり、標高4026メートルという高所にある。

同名のシカシカ郡の首府であり、南はペルーとの国境のデサグワデーロ、南東はオルーロ、パリア、東はコチャバンバ、北西はラ・パスの諸郡と接している。


北から北東にかけて、東コルディエラ山脈に臨む方面は農産物がよくでき、果物、特に、葡萄、コカ、タバコ、木材の産地として知られる。
酸素の薄い高地に住まうインカ族にとって、その鋭気を高めてくれるコカは当時から人々に愛用されており、シカシカはその産出のおかげで比較的裕福な地域であった。


そして、アパサもまた、表面上はコカや服地などを商う豪商を装っていた。

かのトゥパク・アマルが商隊を組んで多数のラバを従えて旅をしていたことが、嫌疑の目を逃れて反乱を組織するのに役立ったのと同様に、このアパサも商人であったことは、その反乱準備をスペイン役人の注意を引かずに進める上で大いに役立っていた。




アンドレスは身だしなみを整え、部屋を出て階下へと向かった。
既にアパサは起きていて、広間のテーブルで朝食をとっている。


「おはようございます」

アンドレスの挨拶に、アパサは黒っぽい麦芽の塊のようなパンを豪快にかじりながら、ちらりと目を上げた。

「おはよう」

アパサも挨拶を返し、「座れ」と、テーブルの向かいにアンドレスを座らせた。


「アンドレス様、おはようございます」

ニコニコとアパサの妻バルトリーナが挨拶をしながら、新鮮な果物がふんだんに盛られた朝食を運んできてアンドレスの前に並べた。
アンドレスもバルトリーナに挨拶を返す。


アパサはチチャ酒を片手に、アンドレスに「食え」と勧め、それから、「お前、これからどうする?」と問う。
アンドレスはその問いの意味をにわかには掴みかね、朝から酒を呑んでいる眼前の男の顔を見た。


アパサは酒をあおった。

「ここを出て、故郷へ戻るか?」

アンドレスは不審そうに目を細めた。

「どういう意味です?」

「いやなに、身の程を知ったかと思ってね」

アパサは、わざとらしくニヤリと笑う。
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