コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~
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発行者:風とケーナ
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ジャンル:ファンタジー

公開開始日:2010/06/20
最終更新日:2012/01/07 14:20

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コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~ 第9章 若き剣士
その時、ふと近くに人の気配を感じた。


アンドレスはゆっくりと重い瞼を上げていく。

すっかり夜も深まった薄暗い室内を、数本の蝋燭の光が音も無く浮き立たせている。
彼は痛みのために首を回せず、瞳だけ動かして、ぼんやりとした視界をたどっていった。


寝台から2~3メートル離れた戸口近くの椅子に、ひっそりと佇む人影が見える。
まだ霞んだ視界の中で、アンドレスは目をこらした。

その瞬間、彼は目を疑った。



長く編んだ黒髪を華奢な肩の前に垂らして、涼やかな瞳に優しい眼差しを宿し、息を詰めてこちらを見守る一人の少女の姿がそこにあった。

それは、コイユールの姿だった。


「コイユール…?!」

アンドレスは、擦れた声で呟いた。


すると、その人影はハッとして椅子から立ち上がると、ゆっくりと、慎重に近づいてきた。
アンドレスは痛みも忘れて、そちらを振り向き、釘づけられたようにその人を見た。


「気がつかれましたか、アンドレス様」

安堵したように人影が言う。
はっきりとしてきた視界の中で、彼をそっと見下ろす少女は…それは、全く知らない人だった。


(こんなところに、コイユールがいるわけないのに……)

アンドレスは、心の中で寂しく苦笑した。



そして、改めて、目の前の少女に視線を向けた。
アンドレスは静かに話しかける。

「介抱して…くださったのですか?」

先ほどアパサに何発も見舞われた拳のために、声が出にくくなっている。
少女は、息を詰めたまま、小さく頷いた。



自分よりも少し年下ぐらいの清楚な雰囲気のインカ族の少女で、控えめながらも、そこはかとなく漂う華やかさがある。
その気配は、可憐な見かけにもかかわらず強い生命力を宿し、優しい桃色の花を咲かせるアルストロメリア(インカのユリ)を思わせた。



確かに、雰囲気が、どこかコイユールに似ているのだ。


少女は、恥ずかしそうに、少し伏し目がちなまま、アンドレスをそっと見た。

「お加減は、いかがですか?」

「あなたは?」

「私は、アパサ様の姪、アンヘリーナと申します。
叔父様から、アンドレス様のご滞在中のお世話をするようにと…」

そして、淑やかに頭を下げた。
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