コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~
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発行者:風とケーナ
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ジャンル:ファンタジー

公開開始日:2010/06/20
最終更新日:2012/01/07 14:20

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コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~ 第9章 若き剣士
アンドレスは、乾いた唇を舐めた。

足で地を踏みしめるが、いつものような安定感を得られない。
早くも額には汗が滲み出していた。


一方、身構えたまま動けぬ彼を挑発するかのように、アパサはゆっくりと前に出て、その間合いを詰めてくる。

無構えのままジワリジワリと近づいてくるだけだというのに、しかも特別な威圧感を発しているわけでもないのに、まるで全てを吸い込んでいくかのような不気味なオーラを発している。

アンドレスの横顔を一筋の汗が伝った。



彼は、にじりよってくる眼前の「師」を見据えた。

(この男には手加減不要!
いつものように斬り込んでいくのみ!!)

心の中で自らを奮い立たせるように叫んだが、既にアパサの「気」に囚われ、その何とも掴みどころのないモヤリとしたオーラの中に、全ての力を吸収されてしまったかのごとく錯覚に呑まれていた。


(体が、動かない――!?)

アンドレスの額から、さらに多量の油汗が流れた。


「どうした、早く来いよ」

アパサはさらに間合いを詰めながら、あからさまに侮蔑的な眼でこちらを眺めている。


アンドレスの鼓動が速くなる。
どう動こうとも、全て相手の読み筋にはまっている?!――彼はそんな念に憑かれた。


しかし、このまま何もせずには終われぬ!とばかりに、彼は、突如、矢のように鋭く斬り込んだ。
それは、もはや素手の相手に向かう攻撃ではなかった。
だが、アパサはあっさりと刃をかわし、「おまえ、目をつぶっているのか?」と、馬鹿にしたように鼻で笑う。



まだほとんど動いていないというのに、アンドレスの息は既に上がっている。
荒い呼吸のために肩を上下させながら身構える彼の前で、アパサは愚鈍にさえ見える動きで、さらに間合いを詰めてくる。


アンドレスの目が険しくなり、鋭い光を放った。
その目の色の変化に、アパサもこれまでとは少し違う色で見返して言った。

「そうだ。
来いっ!!」


その言葉が終わるか否かの瞬間に、アンドレスの放った剣は、確かに電光石火のごとく、宙に火花を散らしながらアパサの急所に襲いかかった。




その瞬間、アンドレスは、アパサがそこに止まったまま動かずにいるかのような錯覚に囚われた。


しまった!!――瞬時に彼は我にかえった。

自らの理性の箍(たが)を外して、武器も持たぬ師に、真剣で襲いかかるとは!!
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