コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~
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発行者:風とケーナ
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ジャンル:ファンタジー

公開開始日:2010/06/20
最終更新日:2012/01/07 14:20

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コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~ 第9章 若き剣士
トゥパク・アマルが副王宛ての嘆願書をしたため、首府リマへ持参する準備を整えていた頃、この物語のもう一人の要(かなめ)となる人物、かのトゥパク・アマルの甥、アンドレスは16歳になっていた。

間もなく、彼はクスコの神学校を卒業し、そのまま故郷には戻らず、あのフリアン・アパサの元へと向かった。




アパサは、トゥパク・アマルらのいる「ペルー副王領」に隣接する「ラ・プラタ副王領」の豪族で、トゥパク・アマルの反乱計画の一翼を担う重要な同盟者である。
もちろん、スペイン役人たちの目を逃れるために、彼もまたトゥパク・アマルと同様、外面的には単なる豪商を装っていた。

そして、かつて反乱の同盟を結ぶため、トゥパク・アマルが彼の元を訪れた時、彼はアパサの武人としての腕を高く買い、自分の甥であるアンドレスの武術修行の師となることを依頼したのだった。



その後も、トゥパク・アマルとアパサは、反乱計画を秘密裏に進めるために、役人の目を逃れて数回の会合を重ね、徐々に互いの絆を深めていった。
アパサは清廉高潔なトゥパク・アマルとは性格がかなり異なり、良くも悪くも豪放磊落で人間臭く打算的な人間であったが、その違いが陰陽のごとく、互いへの関心をいっそう惹きつけ合っていた。


最初はアンドレスの受け入れなど、まともに考えてはいなかったアパサだったが、トゥパク・アマルという人物を知るにつれ、そして、命を半ば捨てたその覚悟を知るにつれ、その甥なる若者を武将として一人前に育てる、ということの意味を次第に認識するようになっていた。

トゥパク・アマルにも息子はいるものの、まだ幼く、また、彼自身がかつて語ったように、息子では役人の目にもつきやすいのは確かにその通りに違いなかった。



アパサの目から見ると、トゥパク・アマルはいつ命を落としても不思議ではないような、きわどい綱渡りを続けているように見えてならなかった。
トゥパク・アマルは、この先どのようなことになるかわからぬ――アパサの脳裏には、そんな不吉な予感が常にこびりついて拭えなかった。


そして、結局、甥のアンドレスなる若者を自分の元に引き受けることを承諾したのだった。
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