spring
第2章 searching,
目が覚めたら、さくらはいなかった。
一瞬、血の気が引いた。
ホテルの支払いが出来るほど、金を持ってない。
だけど、すぐにナイトテーブルにメモがあるのに気がついた。
“ホテルの支払いは済んでる。
朝食は用意したから、良かったら食べて。昨日はごめんね。”
綺麗な字でそうかかれていた。
それと万札が数枚、メモと重ねられて置いてあった。
「嫌みなやつ‥」
大金だ。
ここの宿泊料金や昨日の食事代だって、かなりしたはずなのに。
謝罪のつもりか。
昨日というか、正確には今朝まで、何時間もあいつのいいようにされた。自分が何回イったのかも覚えてない。
さくらが俺を抱えて眠ろうとしたときに、ほっとけば良かったんだ。余計なことを言ったばかりにこれだ。
いや、そもそも客を選び間違えたんだ。
最初から、俺には荷の重い客だった。
本当にただ夕飯を奢ってくれて、泊めてくれるだけの、小金を持っていて小心で優しいオッサンを狙っていたのに。
怖かった。
優しいのに、身体がどうにかなってしまいそうな程の快感も、何も出来ずに流されるばかりの自分も。
あの綺麗すぎる顔も。
だけど、どっちみち、もう春休みも家出も終わりだ。
だけど、 どうしょう。
この大金‥。
9