spring
第4章 searching,
「あっ、ごめん‥」
そう、スマホはまだメールアドレスを取得してなかった。
「スマホはアプリ用で、連絡はまだケータイ使ってたから、」
『‥使ってない方の番号教えてくれたの?』
「使ってないわけ訳じゃない。
それにサクラと会ったときケータイ持ってなかったし。‥なんで怒ってるの?」
スマホはメアドの登録はしてなかったけど、いつも手元に置いてるし、今だってちゃんと電話にでれた。
サクラが何で怒ってるのか分からない。
『怒ってないよ』
「うそ‥」
サクラの声は柔らかい、けど。
笑ってない気がした‥。
途端に、気分が沈む。そんな怒らす様なことをしただろうか。
電話越しにサクラがそっと息を吐き出すのが聞こえた。
逡巡するような、一瞬の間。
『‥間違ってたらゴメン。
君は普段用の他に、売春用に個人情報を登録していない携帯を持っていて、あの日俺に売春用の連絡先を教えた。違う?』
売春‥。
そう、俺のしていたのは売春だ。
けど、それをサクラの口から聞いた瞬間、心が、一瞬で冷えた‥。
俺は、サクラと連絡先を交換したのが嬉しかった。浮かれてた。
けど、サクラは…‥。
「‥‥だったら何?
そんな事、サクラに怒られる筋合いないっ」
違う‥。そんな事が、言いたいんじゃない。
でも、胸が痛い‥。
自分が悪いんだって分かってるのに、痛い‥‥。
俺がサクラの連絡先を見ている時、サクラは俺の連絡先を見て、真逆のことを思ったんだ。
『‥そうだね。俺がハルに怒るのは筋合いだ。ごめん、嫌なこと言った』
「知らない‥、
もう話すことないっ」
サクラの返事を待たずに電話を切った。電源も。
全部自分が悪いって分かってる。
ろくに考えもせずに路上に立ったことも、サクラにちゃんと連絡先を教えなかったのも。
だけど、サクラと会ったのは路上だったじゃないか。何故今、それを責めるの‥?
声を上げて泣いても、聞く人はいない。
俺は独りだった。
25