毬音の檻
毬音の檻
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発行者:梶浦絶
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ジャンル:恋愛

公開開始日:2012/03/22
最終更新日:2012/03/27 19:02

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毬音の檻 第1章 暗闇から覗き見た、暗闇。
 ドサッという大きな物を落としたような音が聞こえた。
 毬音はさっと充にかけより、背中からしがみつく。
「何の音……? おじさんなんだよね?」
「さっき、さっき知らない女の人……」
「何?」
「お父さんが髪をひっぱてたみたいだったんだ」
「なんでそんなことするの?」
「そんなの、知らない、俺が間違えたのかも」
「そうだよ、きっと」
 毬音は不安そうに充の言葉を打ち消す。
 二人は怖くなって固まったまま身を寄せ合う。あの大きなもの音はなんだったのだろう。しばらくじっとしていた二人が、どちらからともなく部屋のドアまで行ったとき、また聞いてはいけない音を聞いてしまう。
「ああ! いやあぁ! やめてー、やめてー!!」
 二人は思わずドアから体を離し、息をのむ。知らない女の人の声だった。毬音や充が今まで聞いたことのない種類の叫び声だった。
「矢内さん! やめて 放して!」
「ほら、膝をつけ! 頭を下げろ!」
 バシッとどこかをうちつけたような音がする。
「うう!」
 毬音は縋るように充を見つめる。
「ど、どうしよう……どうしよう、怖いよ」
「お兄ちゃん」
 充は真っ青な顔をして、それだけを言う。
 一階では人が殴られるような音や何かがぶつかるような音、悲鳴や恐ろしい怒鳴り声が聞こえてくる。ドアを開けて、階段を下り、家から出ることなどできなかった。
 暴行は玄関を入ったところ、すぐそばで行われているからだ。
「お願い……、お願い……」
 見知らぬ女の人が哀願している。
 毬音と充はお互いの手を取り合って、ドアから離れ、充のベッドの下に潜り込んだ。
 冷たい床に二人並んで寝そべり、息を殺す。
 見つかったらいけない、と必死だった。
 じっとしていたらきっと見つからない、そう思っていた。
 二人は玄関に並べて置いた自分たちの靴の事など、忘れていたのだから。
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