毬音の檻
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発行者:梶浦絶
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ジャンル:恋愛

公開開始日:2012/03/22
最終更新日:2012/03/27 19:02

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毬音の檻 第1章 暗闇から覗き見た、暗闇。
 右のお家は毬音、左のお家は充とお兄ちゃん。
 右のお家のほうが新しくて、左のお家はそのつぎに新しい。
 子供たちは三人で、道路の先に並んだ自分たちの家を見ている。
 毬音は左右の充と翔を交互に見る。
 白い頬は柔らかそうで脆そうで、大きな瞳は色素が薄く、特に陽の光を受けると茶色く見える。
 皆が毬音の容姿を褒めた。
 〝将来が楽しみだ、とんでもない美少女になるね〟
 母はいとおしそうに毬音の頭を撫で、父も嬉しそうに笑うので、毬音は嬉しくなり、そういう時いつも微笑む。
「毬音、寒くない?」
 いつも気を使ってくれるのは兄の翔だった。
 毬音はお兄ちゃんと呼んでいる。最初は〝充のお兄ちゃん〟だった。
 ひとりっこの毬音は兄のいる気持ちになりたくて、あるとき充に頼んだことがある。
『毬音も、お兄ちゃんって呼んでいい?』
その時充は、怪訝な顔をして言った。
『何でそんなこと聞くの? 変なの』
 充は毬音と同じ年で、神経質そうな様子を時折見せる。兄の翔は優しくおおらかだったが、充は気持ちの揺れ動きが激しく、毬音は機嫌のいいときの充しか好きではなかった。
「あー、俺、サッカー呼ばれてたんだった」
 急に、翔が声をあげた。そして立ち上がる。
「えー、毬音と二人じゃ面白くないのに」
 充は不満げな顔をして兄を見上げる。
「二人ともきなよ」
「え、いいよ。だって毬音サッカーできないもん」
「俺いい。お兄ちゃんだけ行けば」
 じゃあ、ごめんな、と翔は言い、公園に向かって走り出す。
 毬音と充はそれを見送る。
「行っちゃった……」
 毬音はがっかりして俯く。
 翔が居なくなったことで、急に寒くなった気さえする。隣をみると充は思いつめたような顔をしてアスファルトを見ている。
 まるでそこに文字が書いてあるかのように。

 
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