MaraSon Part2
第2章 2
「お父さん」
僕が呼びかけると、父親はまた、びくっとしたように頭を上げ、怪物でも見るような怯えた、あるいは嫌悪感も含んだ目で、僕を見た。けっこう、存分に嫌ってくれていい。
「息子さんの覚悟は聞きました。でもお父さんは、どうなんです? 本当に大樹君のやろうとしていること、いや、彼は未成年ですから、ま、一般的には僕らが彼にやらせようとしていること、その意味、わかってます?」
「私は……」
父親は僕と目を合わせることができず、口ごもる。
「僕は悪人で、法律の面から言えば、そう、はっきりと、犯罪者です。これからも大樹君に、悪事を働こうとしている。でもね、お父さん。お父さんも共犯ですよ。それはわかってますか?」
何も言えない父親を前に、大樹君が何か言おうとしたけれど、僕は手つきでそれを封じた。これは大人の問題だ。
「ただね。もし、もしもですよ。このことが露見したら、僕の罪は相当重い。お父さんの方は、そうでもないでしょう。世間の目は相当厳しいとは思いますが、刑事罰としてはね。実行方面では僕と大樹君ばかりが動くわけですから」
僕は父親に皮肉っぽい笑みを送ったが、僕と目を合わせようとしない彼に届いたかは、わからない。
「そうなると、逆にまともな父親ならば、いつかね、こんなことは息子のためにならない、やめさせなくては。警察に正直に全部話そうって、なるかも知れない。僕はそれが恐い」
大樹君が腰を上げて「それは……」と何か言いかけたのと、父親が「私は、そんな……」とやや強く答えたのが、同時だった。僕は手のひらを彼らに向け、二人の言葉を遮った。
「僕はね。お父さんにも相応の覚悟を決めてもらおうと思います。深い罪に踏み込み、秘密を僕と、大樹君と共有するんだ」
すぐには意味はわかるまい。父親にも、大樹君にも。
「簡単なことです。今ここで、お父さんが大樹君を犯す。言葉が強すぎるなら、セックスする、でもいい。それを僕がビデオ撮影し、『保険』として確保する」
25
NIGHT
LOUNGE5060