MaraSon Part2
第2章 2
「たぶん誰か他の子が使っていた白いブリーフに、スクール水着、競泳水着、何というか、女性のTバックのようなきわどい下着や、赤いふんどしまで、送られてきました」
ふんどしかよ。僕は吹き出しそうになり、次いで頭が痛くなった。その猛烈な執念というか執着が、ある程度理解できてしまう自分が痛い。
だが父親の方は、笑い事じゃない。
「すでにお金を受け取ってしまって、引くに引けませんでした。私は大樹に頭を下げました。撮った写真を売るのだと、正直に言いました。この子は、嫌がりもしませんでした。お金が入って、お父さんが楽になるならいいと。いくらでも撮ってと」
健気な大樹君に自覚はなかろうが、そんなふうに言われたら、余計この父親の罪悪感はきつくなってしまったことだろう。父親は横目で彼を見つめ息子に、まさに顔向けできない様子だった。
「私は依頼者の要求のままに、指定された下着、指定されたポーズで大樹の写真を五十枚撮って、送りました。その人は満足したという一方で、すぐに次の要求をして来ました。エスカレートして、動画がほしい、勃起させたところが見たい。少年とはどういう関係だ、彼は息子なのか、どんなことまでさせられるのかと、それはもうしつこくて。私は気持ちが醒め、恐くなって、連絡を絶ちました。口座も閉じ、メールも、フリーメールでしたから、破棄して。でも手遅れでした。送った写真の何枚かは、低画質に加工されてはいましたが、ネットに流れています。今も……」
僕は大きなため息をついた。大樹君はとても気の毒だが、はっきり言ってこの父親に同情の余地はない。
ただ、こういうこと、永遠に流通し続ける児童ポルノ画像等で「児童」が傷つき続ける、という世間一般の論調は、感情に屁理屈をくっつけただけのものだ。自分の知らないところでその人の裸の画像を見た誰かが自慰をしていたとして、本人がどうして傷つくって言うんだ。嫌悪感と事実を一緒くたにして大きな声で主張するバカが多すぎる。
22
NIGHT
LOUNGE5060