MaraSon Part2
第2章 2
ついに父親は本気で泣き出した。そして声を絞り出した。
「私が悪いんです。妻が姿を消して、大樹が五年に上がってすぐです。私は本当に煮詰まって、その日の金にも困っていました。ネットで仕事を探していましたが……。その時、少女の画像交換サイトのようなところから、逮捕者が出たというニュースを見かけました。それで、思いつきで調べたら、男の子のそういうのもある、とわかりました。検索で簡単に掲示板がヒットしました。携帯のものでしたが……」
父親は声を震わせながら続けた。
「息子は、親の欲目と言うべきかもしれませんが、外見は人目を引くぐらいだと、思っていました。アップされた画像を見て、こんな子でも売りものになるのか、顔をぼかされていても、食いつく人がいるのか、と思いました」
いやいや、決して欲目じゃない。大樹君はかわいい。
「それで大樹を誤魔化して、シャツとパンツ姿を一枚、パジャマ姿を一枚デジカメで撮って、投稿しました。今から思えば愚かなことに、この子の顔も隠さず。すぐにコメントがつき、メールもたくさん来ました。ほとんどが裸をアップしてくれ、というようなものでしたが……」
力が抜けてくるがっかりな世界だ。僕もその一員ではあるけどね。
「高く買うから裸の写真を売ってくれ、というものもありました。さすがに、抵抗がありましたが……。中に、下着でいいから高画質で五十枚撮ってくれと、それに二十万出すと、いうのがありました」
やれやれ。
「下着なら、と思いました。メールをやりとりして、その人は、穿いてほしい下着を送るから、サイズを教えてくれとか、言ってきました。下着だけで、しかも五十枚も撮るとなると、誤魔化しはききません。これ(父親は大樹君の頭に手を添える)も十歳でした。幼児じゃありませんから」
大樹君はじれったそうに、父親と僕の顔を、交互に見ていた。
「目先の二十万が、その時の私にはとても魅力的で、正常な判断ができなかった。局留ですが住所と、振込先をメールしたら、先に二十万、ちゃんと振り込まれてしまい、下着が届きました」
嫌な予感がするな。I have a bad feeling about this.
21
NIGHT
LOUNGE5060