MaraSon Part2
MaraSon Part2
成人向完結
発行者:とりさん
価格:章別決済
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ジャンル:その他
シリーズ:MaraSon

公開開始日:2012/03/20
最終更新日:---

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MaraSon Part2 第2章 2
「この子が三年生くらいの頃から、事業の雲行きは怪しかったのですが、今から思えば、私は引き際を完全に誤りました。会社を潰し、家も売って、私たちはほとんど無一文になりました。大樹が小五に上がる時に、私立から退学させざるを得なくなりました」
 大樹君はうつむいて、唇を噛んでいた。慰めや同情はいらない、か。
「ピアノや水泳も習わせていましたが、全て辞めさせざるを得ませんでした。恥ずかしい話ですが、妻にも逃げられ、この子から母も奪ってしまった。今は小さなアパートに、この子と二人暮らしです」
「あの人はお父さんのお金と、服とか派手な遊びが好きだっただけだよ。気にしなくていいって、何度も言ったじゃない」
 大樹君は強い口調でそう言って、父親の膝に手をそっと置いたが、僕に言わせればそんなセリフは、断じてこの男の慰めにはなっていない。むしろ彼はひどく傷つくだろう。子どもというのは時に残酷なものだ。自覚的にも無自覚的にも。
 年何千万も稼いで、体格や男としての強さ、外見にも恵まれた彼は、かつては自信に満ちあふれていただろう。息子にも相応の期待をかけ、金をかけ、毎朝一緒に走って、私学にも通わせた。本来質のいい、本当の教育熱心さを持った父ではなかったか。今は見るかげもない。三十を過ぎての大きな挫折は、時に致命的だ。少年の頃のそれとは、わけが違う。
「先生、僕は小学校低学年の頃までは、よくわかってなかったけど、だんだん周りと違うって、お父さんは僕にすごく期待して、力もあるって信じて、いろんなことをしてくれてるって、わかってきたんです」
 息子のきつい言葉に黙り込んでしまった父に代わり、また大樹君が話し始めた。
「僕、一生懸命がんばりました。勉強も、習い事も。でもぶっつり、それが……」
 僕はちょっとひっかかって、口を挟んだ。
「待った。習い事はわかる。でも勉強は、自分次第だぜ。私学に行けばそりゃ、有利だろうさ。周りの子のレベルも高いし、先生もそのつもりで授業するからね。でも公立じゃだめってことはないだろ? 本人の努力と、自覚次第だ。自慢じゃないが言わせてもらえば、僕は小中高と公立だ。大学も国立。親はどちらかと言えば収入的にはダメな方のサラリーマンだ。奨学金とバイトで、何とかしたよ。ま、医者になれば周りはボンボンばかりでね。不公平だと思うことは多々あるけどね」
 大樹君は悲しげに首を振った。
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