MaraSon Part1
第1章 1
僕は少年愛者だ。僕が一番好むのは思春期ちょっと手前から中一くらいまでの少年だから、患者の男の子の多くはいささか幼すぎるのだが、それでも好みの子との接触はそれなりに楽しめる。元気になった時が別れる時、というのはこの職業の宿命的なつらさだが、僕好みの、いわば将来有望な幼い男の子が手を振ってさよならをしてくれて、後に年賀状が来たりする。そこには男の子の住所と氏名と、感謝の気持ちが載せられている。今のところそこから何か続きがあった試しはないが、いずれはあるかもしれない、とか考えるだけでも少しは幸せな気分になる。
とにもかくにも医者も体力勝負。からだを壊したら終わりだ。そんなこともあって、サラリーマン医者生活二年目から、早朝ジョギングを続けている。ただもちろん夜勤明けは休むし、二日酔いの日だってある。無理をしないのも継続の秘訣だと思っている。アスリートを目指すわけじゃないんだから。
今のマンションに住居を定めてから、ほぼコースは決まっている。ただ当初より少し長くはなった。
特に気に入っているのが、マンションから半キロほど走って出られる河沿いの道と、それに続く公園の遊歩道だ。毎朝景色も空気も変わる。一年を走り通せば、四季の移ろいを五感で感じることができる。流行りのフィットネスジムは運動負荷などを調節しやすいけれど、僕にとってはそれよりもこの五感で感じる自然と、一人の時間に大きな価値があった。
比較的自然豊かなその河沿いと公園の遊歩道は、多くのランナーの共通コースになっている。ウォーキングや犬の散歩の人なんかを含めると、もっと多い。朝の六時台でも、けっこうな人と行き交うことになる。中高生の部活に燃える子たちには抜かされる。お年寄りを追い抜く。小学生も時々いる。でも最近の世相からか、小学生くらいだと一人で走っている子はまずいない。ダイエットのためか、太っている子を無理矢理走らせているらしい母親なんかも見かける。
2
NIGHT
LOUNGE5060