人形の見る夢
人形の見る夢
成人向
発行者:ほおずき
価格:章別決済
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ジャンル:その他

公開開始日:2012/03/05
最終更新日:2015/07/17 11:20

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人形の見る夢 第6章 撫子 前半
「マスター、それ…」


マスターが持って帰ってきたのは、黒く重厚な箱だった。まるで吸血鬼が眠っている棺桶のような。


「そうだよ。この中にガラスケースが入っている」


「そう…」


透明なガラスケースを、敢えて真っ黒な箱の中にしまい、音も光もすべての刺激を遮ってしまう。色素を持たず紫外線に極端に弱かったアルビノさえ、ガラスケースの中で育ったのに。


この人形は真っ暗な闇の中に閉ざされている。
それは、感情を殺す手法だ。

その箱を見たとき、私の心の中の真っ黒な何かがゆらりと揺らめいて不意にその存在を知らせた。

何か、忘れていた何かが…。





「真っ暗な瞳と髪の人形が見つかったんだ。
それも"箱入り"のね」


「自我がなければ、
性格を似せる必要はないものね…」





人形は学習能力が人間の子供以上に高い。
ガラスケースの中で、回りの人間の言葉を聞いて意味を理解し、感情を発達させる。

そうしてガラスケースから出るときには、誰に教えられなくても言葉を操る。けれど、"箱"に入れられたら、言葉を覚えず知能は発達しないし、自我も生まれない。

心のない人形が出来上がる。




「可哀想だと思う?」


「どうかしら。
感情があるからこそ不幸なことは幾らでもあるから」


人形を買っていく人は様々だけれど、買われていく目的の多くは性的な愛玩だ。心があることが幸せとは限らない。

それでも人形は、自分だけのマスターがガラスケースから出してくれる日を夢見ている。



「人形の凄いところは、ガラスケースから出れば日常生活に必要なことは割りとすぐに学習する知能だね」


「けど、人間より優れた知能は得られない。
人形は人間の複製だから」
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